2019/10/16
【2019年最新家具インテリアトレンド】ミラノ・サローネに見る「9」のキーワード
「ミラノサローネ国際家具見本市」は、毎年イタリアのミラノでおこなわれるインテリア最大の見本市です。見本市会場のほかに、ミラノ市内でも各メーカーの最新商品の展示やインスタレーションがおこなわれ、インテリアの最新情報が集まる6日間。
ミラノサローネの動きを見れば現在のインテリアの傾向やトレンドが見えてきます。
そこで今回は【2019年ミラノサローネ】を元に、Hello Interiorのチーフコーディネーター村野友明が2019年最新のインテリアのトレンドを解説します。
ミラノサローネのトレンドが日本のトレンドに反映されるまで半年から一年位かかります。ぜひこの記事を参考にトレンドを取り入れたインテリアを楽しんでみていただきたいと思います。
近年のインテリアトレンド
2019年のインテリアトレンドを解説する前に、まずは近年のインテリアトレンドを振り返りましょう。
■ デザイントレンド
・ミニマル&コンパクトが長年の主流
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デザイン、カラーともに、装飾をおさえたミニマムが長年の主流でした。
過去の作品を再構築したシンプルなデザインが多かったように思います。
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また、大きな家具がよいという流れから、住空間にあうコンパクトな家具へ向かう傾向もみられました。
2018年には、日本のキッチンメーカー「サンワカンパニー」のコンパクトキッチンの展示が「ミラノサローネ・アワード」を受賞したことも話題になりました。
・ガーデン用の素材がインテリア素材として使われている
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近年の流れとして、アウトドア用家具の素材が屋内用家具にもつかわれるようになり、屋内外どちらにも使用できる家具が増えてきました。
たとえば、パオロ・レンティのカラフルな家具が屋内外で使用できる家具として注目されます。
■ カラートレンド
・ベルベット・真鍮・シルクなどの高級感を感じる素材やカラーから、落ち着いたアースカラーへ
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ベルベッドや真鍮、シルクなどの高級感が感じられる光沢のある素材が長くみられましたが、近年はアースカラーというわれるベージュやグレー、ブラウンが多く使われるようになりました。
特にグレーのソファが多く、彩度の低いイエローやグリーンがアクセントでプラスされることが多い傾向です。
また、ファッションブランドのホームコレクションが展示され、カラーでもファッションの流行と時差がなくなりつつあることが指摘されるようにもなりました。
■ マテリアルトレンド
・木材は近年ウォールナット、マホガニーなど「赤系樹種」の濃い色が多かった
ウォールナット
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木目を生かしたウォールナットが長くトレンドの座を保っています。
木目の表情を残したまま、グレーに着色されたり光沢のある仕上げにしたりという流れもみられました。
マホガニー
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マホガニーなどの「赤系樹種」が見られる傾向もありました。色味は濃い色が多かったと感じています。
・無骨なインダストリアルマテリアルが活躍
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ファッションブランド「DIESEL」の展示に見られたように、インダストリアルも根強い人気があると感じます。多くのメーカーがブラックアイアンをつかった家具を発表するなど、無骨なマテリアルが多くみられます。
・大理石などに代表される大胆な柄の石素材が多く使われる
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はっきりした木目の家具や、マーブル模様が特徴の大理石が近年のトレンドです。
大理石は日本の高級ラインの扱いというよりも、木材に代わる素材としてもっと気軽に使用されている印象でした。
【2019年】ミラノサローネの総括
具体的な2019年インテリアトレンドを見ていく前に簡単ではありますが、2019年のミラノ・サローネの総括をしてみましょう。
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ここ数年トレンドだった「ミニマリズム」がその主役の座を降り、今年開校100周年を迎えたバウハウスの機能的で特徴的なデザイン、カラーが主役になりました。
ブルーやイエローのレトロさが感じられる元気なカラーもひとつの流れです。
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そこにビビットなカラーではなくダルトーンやペールトーン、グレイッシュなどの彩度をおさえたカラーに少しだけ鮮やかさを加えたカラーをプラスしたものが多くみられました。
たとえば、上の写真のような「サンゴ色」も今年の大きな特徴です。
ほかにも写真にうつるグリーンや、ナスのような濁りのあるパープルも多くありました。
デザイン面では多機能がキーワードといえるでしょう。
可動性やモジュール性、アウトドアなどがその代表です。
◇ ミラノ・サローネとは?(ビギナー向けのおさらい)
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ミラノサローネの正式名称は「ミラノサローネ国際家具見本市/Salone del Mobile.Milano」で、イタリアミラノで毎年4月におこなわれる家具見本市。
期間は6日間で、イタリアのみならず世界中のエーカーが最新作を発表する。
見本市会場のほかミラノ市街のさまざまな会場でも「フォーリ・サローネ(サローネの外という意味)」としてインスタレーションなどを展示。
インテリアの最新情報や最新技術を求めて世界中のバイヤーやデザイナーなどが集結するビジネスの場であり、デザイン好きにも人気のデザインフェスティバル。
ミラノサローネ国際家具見本市【Salone del Mobile.Milano】公式サイト
https://www.milanosalone.com/
▼ミラノサローネについて詳しくはこちら
◇ バウハウスとは?(ビギナー向けのおさらい)
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1919年にドイツ・ワイマールで生まれた総合的造形学校。
絵画、彫刻、建築、工芸教育に革新的な教育をおこなった。
校長は就いた順に、ヴァルダー・グロピウス、ハンネス・マイヤー、ミース・ファン・デル・ローエ。
現在よく知られる優れた人材を多く輩出。
近代デザインに大きな影響を残し、1933年にわずか14年でナチスにより廃校になった。
【2019年】ミラノサローネに見るインテリアトレンド「9のキーワード」
2019年のミラノサローネから読み取れるインテリアトレンド「9のキーワード」を下記の通りまとめました。
- ミニマリズムの後退と新ミニマリズムの台頭
- プリミティブで手仕事を感じるデザイン
- バウハウスの台頭
- サスティナビリティとリサイクルへの意識
- 多機能性
- 高いモジュール性
- アウトドアを感じるインテリア
- 新しい素材への挑戦
- ダヴィンチ没後500年
ここからひとつずつ写真とともに確認してみましょう。
① ミニマリズムの後退と新ミニマリズムの台頭
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色数が少なく装飾をそぎ落とした見た目のミニマリズムは後退し、「ミニマリズム+機能的」の新ミニマリズムへの変化が見られます。
それは機能性から生まれる飾り気のない質素なデザインです。
快適に座るための形状やスタッキングなどの機能が考えられ、それがシンプルな椅子のデザインに結びつくイメージです。
下の写真のような、ミニマムなラインで軽量なPoliformのラウンジチェアも新ミニマリズムの流れと考えられます。
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② プリミティブで手仕事を感じさせるデザイン
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数年前から流れはありましたが、今年はよりプリミティブで手仕事が感じられるデザインが多くなっています。
プリミティブとは「素朴な」や「原始的な」という意味で、古代の生活を感じさせる素朴な造形や、自然素材の木や竹などをつかった作り手による工芸品というイメージです。
また、経年変化を味わうような素材使いもみられました。
どっしりした無垢材や石がつかわれ贅沢でもありながら原始的な雰囲気もあるスタイリングが特徴的です。
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③ バウハウスの台頭
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前述したようにたった14年で廃校になったバウハウスですが、100年という節目を迎えますます注目される存在になっています。
インテリアへの影響は、コンクリートや鉄、ガラスなどのシンプルな近代的な素材と、赤・青・黄などの色彩にあらわれています。また、四角や三角、円を基本とするという特徴があります。
後述の機能性もバウハウスの影響が考えられます。
今年は円形のテーブルも多く、当時の椅子の復刻や新しい解釈のデザインも多くみられました。
下の写真は、バウハウスを思わせる格子の天井とパイプ椅子などが展示されたknollのブースです。
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④ サステナビリティとリサイクルへの意識
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サステナビリティとは、「持続可能性」という意味でインテリア業界では環境に配慮した商品をさすのが一般的です。自然素材を永く使用するというようなこと以外に、今年はリサイクル素材の利用も加速し商品として完成度が高くなった印象です。
特に、生分解性のあるバイオプラスチックの使用が目立ちました。今後も環境にやさしいものづくりの傾向は強くなっていくと考えられます。
今年70周年を迎えたプラスチック家具のKartellのコンポニリが、バイオプラスチックで発表されたのもニュースでした(上の写真)。
下の写真は3DプリントのバイオプラスチックをつかったCOSと建築家アーサー・マモウ・マーニーがコラボしたインスタレーションです。
16世紀に建てられた建物と彫刻のようなバイオプラスチックをつなぐ印象的な体験を提示しました。
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⑤ 多機能性
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多機能な家具といえば、サイズを変更できるテーブルや収納付きの家具などプラスアルファの機能がついた家具をいいます。
バウハウススピリットに通じるものがあり、一つの家具に最大限の機能を盛り込む功利主義的なデザインです。
たとえば上の写真奥にある、今年MAGISから発表されたロン・ギラッドがデザインしたパーテーション「SWEING」は、パネルを回転させることで空間の仕切り方を変化させられるものです。
下の写真は、FLOSとnendoの組み合わすことで成長?させることができる照明が組み込まれたテーブルです。
このようにプラスの機能が盛り込まれた家具が多く見られるのも今年の特徴です。
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⑥ 高いモジュール性
https://www.ddnblog.it/2019/06/04/salone-mobile-architettura-effimera/
ライフスタイルの変化にあわせて組み合わせをかえる「モジュラーシステム」も傾向を語るうえではかかせません。
もっとも代表的なものは収納で、棚の位置やパーツをかえて大きさや使い方を変更でき、将来にわたって永く使えるという点からも注目されます。
ほかに、ソファや照明でもモジュラーシステムがみられました。
ユニットを組み合わせてほしいスタイルのソファを可能にするシステムソファには、パーツが交換できたり100%リサイクルが可能なものもあり2019年らしい流れです。
今後はさらにリサイクル素材を使用するだけでなく、「循環させる」方法が検討されていくでしょう。
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⑦ アウトドアを感じるインテリア
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アウトドアへの流れも急激に進んでいます。
昨年発表されたモデルが、今年はアウトドア仕様になって発表されたものもありました。
特徴的なことは、アウトドア家具といっても室内でも使用できるデザイン、つまり屋内と屋外使用の境目があいまいになりつつあることです。
多くの良質なデザインのアウトドア家具がそろうことは、利用する側から考えると喜ばしいことですね。
上の写真のFREXFORMのアウトドアシリーズはとてもエレガント!
アウトドアとは少し離れますが、花柄や草花のファブリックがあふれるスタイリングも今年の特徴でした。
また、今までよりもダイナミックに植物を多用したディスプレイやインスタレーションも多くみられました。
下の写真は自然に生えている植物をつかったジル・サンダーのインスタレーションです。
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⑧ 新しい素材への挑戦
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前述のようにバイオプラスチックの活用が多く見られたほか、溶岩や火山灰などをつかった新しい素材の活用、大理石を一度砕いてから固めるなど従来素材の新しい使い方にチャレンジするブランドがありました。
上の写真はMAGISから発表されたギリ・クチック&ラン・アミタイがデザインしたチェア「Vela」。素材は家具ではほとんど使われてこなかったマグネシウムです。
特性を活かしたチェアは超軽量2.5kgを実現し、スタッキングもできます。
下の写真はKartellのフィリップ・スタルクがデザインした「スマートウッド」コレクションで、スライスした木材に力を加えカーブをつくる昔ながらのつくりかたの工業化を実現しています。
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⑨ ダヴィンチ没後500年
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2019年のミラノサローネは、レオナルド・ダヴィンチの「インジェヌイティ(創意工夫)」に敬意を表して開幕し、ミラノサローネのマニフェストに「インジェヌイティ」を追加しました。
今年はダヴィンチの没後500年になり、ミラノではさまざまな記念行事が催されます。
ミラノサローネでもダヴィンチとイタリアのデザインと文化の関係について2つの展示がおこなわれました。
ひとつは市内に残るダヴィンチが設計した木製の閘門(高低差のある水面を調整して船が就航するための構造物)でおこなわれた、水を主役にした映像と音楽の没入型のインスタレーションです。
もうひとつは、見本市会場でおこなわれたイタリアデザイン文化の変遷、ダヴィンチの才能と現代のイタリアデザインの関係を語る展示です。
ふたつのイベントで、ダヴィンチのエンジニアリングと現代のイタリアデザインとの結びつきとつながりが理解でき、イタリアデザインの歴史の深さをあらためて感じられるものでした。
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まとめ
ミラノサローネのトレンドが日本のトレンドに反映されるまで半年から一年位かかります。取り入れやすい下記2つのトレンドキーワードをぜひ先行して取り入れてみてください。
・アウトドア用の家具をアクセントに一つでも取り入れてみる
・トレンドカラーのクッションやファブリック小物を取り入れてみる
また来年のサローネが今から楽しみです。