【プロが解説】天窓(トップライト)を設置するのはありなのか?天窓を取り入れる場合の注意点や実例も徹底解説

住宅のプランニングをする際、隣家が近接していて壁面に窓を設置しにくかったり、敷地の形状などから、建物の中央部に十分な採光を確保しにくかったりすることがあります。
そんな際に、検討されることが多いのが天窓。
採光や通風の向上、デザイン性の良さなど多くの利点がありますが、一方で、デメリットが気になってしまうという方もいることでしょう。
結論からいうと、天窓の設置は「あり」。
いくつかの注意点をおさえておけば、懸念点を上回る多くのメリットを得ることができます。
今回は、天窓の特徴や注意点、おしゃれなデザイン実例をみていきましょう。
目次
天窓(トップライト)を設置する場合の注意点・デメリットとは?
そもそも天窓(トップライト)とは?役割や歴史的な背景も踏まえてお伝えします
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天窓は、建物の屋根部分に設置される開口部のこと。
トップライトやルーフウィンドウ、スカイライトなどともよばれ、「通風」と「自然光(昼光)の利用」を効率よく行うことができます。
もともと安定した日差しを確保しにくい北欧の国々で、小屋裏を有効活用できるよう開発されたのが、天窓の始まり。
日本においても、世界遺産の富岡製糸場でみられる「越屋根(こしやね)」がありますが、こちらも同じ原理でつくられたものです。
天窓のメリット
https://tenmado-sumai.com/article1.htm#link2
自然光(昼光)には、直射光、天空光(※1)、反射光がありますが、天窓は、天空率(どれくらい空に開いているかの割合)が壁面の窓と比べて高く、天空光を効率良く取り込めるのがメリット。
曇りの日でも、光が届きにくい建物の中心部まで安定した光を届けるので、室内での作業効率を上げたり、空間に広がりを感じさせたりするなど、快適性を高める効果が期待できます(※2)。
天窓の総面積が、照らしたい床面積の10%程度になるよう計画すると、曇りの日でも読書ができる程度の明るさを得られやすいといわれています。
※1:太陽光が塵や雲などによって散乱した、方向性を持たない均一な光
※2:建築基準法では、高窓(ハイサイドライト)の1/3程度の天窓サイズなら、高窓と同等の採光が確保できるとされています。
【日射侵入量の比較:VELUX】
https://www.velux.co.jp/help-and-advice/planning-advice/guide-solargain
天窓は通風効果にも優れていて、壁面の窓だけの部屋と比べると、天窓を設置した部屋の通気量は、約4倍にもなるといわれています。
2階以上の階がある家で天窓を開放すれば、下階の開口部から入った空気が、吹き抜けや階段を通って天窓まで流れ、風の通り道ができやすくなるのも魅力。
【夏場朝夕の日射時間を減らせる縦長サイズの連窓の例】
https://www.velux.co.jp/professional/architects/skylight-planning
温められた空気は高所に移動する性質があるので、天窓を開けることで、天井付近にたまった熱気を排出し、室温の上昇を軽減する排熱効果(ドラフト効果)を期待できるのも嬉しいところ。
ちなみに、効果的な通風を得る場合、天窓サイズは居室全体(LDKなど)の3%程度が目安といわれています。
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また、空に向かって視界が抜けるので、外部への広がりや開放感を感じやすくなったり、照明に頼らずに表情のある空間をつくりだしたりできるのも嬉しいポイント。
他にも、周囲の家からの視線が気にならなくなるほか、外部からの侵入の心配が少なく済むなど、さまざまなメリットがあります。
天窓のデメリット
【高い防水性能を施した天窓の施工例:VELUX「スカイビューシリーズ」】
https://www.velux.co.jp/products/skylights/skyview-x
一方で、天窓は屋根に穴を開けて設置するため、他の屋根の部位や構造と比べると、雨漏りや漏水がしやすくなるリスク(天窓自体と、天窓周辺の取り合い部分いずれも)があります。
南側に設置すると、夏の強い日差しで暑さや眩しさを感じたり、冬は寒さを感じやすくなったりすることも。
台風や豪雨の際に天窓のガラスに雨があたり、雨音が気になりやすくなるケースもあります。
しかしながら、昔の造り付け型天窓とは異なり、現在の天窓は、メーカーによる既製品が主流。
天窓の性能が著しく向上しているので、これらのデメリットはかなり改善されてきています。
【配線工事不要のリフォーム用天窓の例:VELUX「VSSタイプ」】
https://www.velux.co.jp/latest-topics/replacement
天窓の寿命は約25年が目安ですが、雨漏りや漏水のリスクは適切なメンテナンスで解消することができます。
足場を組んだ上での点検が必須なので、外壁や屋根の塗り替えを行うタイミングが最もおすすめ。
天窓自体のパッキンや防水処理含む劣化の程度のほか、天窓周辺の取り合いに不具合がないか、雨仕舞は問題ないかなどの点検を行いましょう。
一般的な塗装業者や屋根業者への依頼は避け、「天窓の施工に強く、雨仕舞への知識がある専門業者」に相談するのが安心です。
均一で柔らかい光を採り込むなら「北向き」の天窓が◎。強い日差しが入る場所にはブラインドなどとの併用を
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天窓を設置する際は、屋根の形状や角度、隣家との兼ね合い、光を取り入れたいお部屋の位置など、さまざまな条件をもとに考える必要があります。
天窓を設置する方角で最もおすすめとされているのは、直射日光を防ぐ「北向きの天窓」。
十分な光量が得られるよう、極力照らしたいエリアの真上に天窓がくるよう配置しましょう。
一方、どうしても「南向きの天窓」を採用する必要がある場合は、ブラインドを併用するなど、日射遮蔽を意識した対策を検討しましょう。
その他「東向きの天窓」は午前中に強い光、午後以降はやわらかい光に。「西向きの天窓」は、午後から夕方に向けて強い光が入りますが、いずれも南向きの天窓同様、ブラインド類の併用がおすすめです。
【傾斜窓用遮光ロールスクリーンの一例】
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直射光による暑さが心配な方には、開閉型天窓(遮熱ガラス)+ブラインドやカーテンの併用がおすすめ。
遮熱性の高いガラス(Low-E複層ガラスなど)で強い日差しを抑えつつ、天窓を開けることで排熱しやすくなります。
目的や場所に合わせて天窓の種類や仕様を選ぶ。準防火地域での使用は事前確認が必須
【お手入れがしやすい中軸回転型天窓の例:VELUX】
https://www.velux.co.jp/professional/products/skylights
天窓はいくつかの種類があり、使用目的や設置場所などに合わせて選ぶのがおすすめ。
なお、天窓は屋根の開口部とみなされるため、防火設備の対象外となりますが、準防火地域での天窓の使用については、各行政ごとの判断となる点に注意しましょう。
一般的に、木造2階建ての場合は「網入りガラスと外装に不燃材(アルミ+ガラス)」を採用すれば認められることが多いのですが、3階以上の建物など耐火・準耐火建築物の場合、各申請機関への事前確認が必要です。
主な種類
●固定式(FIX)
開閉できないので、採光性だけを重視する場所に。雨漏りや故障などのリスクは可動式より少なめ。
●可動式
(手動タイプ)
ハンドルや専用棒を使って開閉するため、手が届く場所に天窓を設置する場合に適しています。採光性と通気性いずれも求めるが、コストを抑えたい際におすすめ。「突き出し窓」と「回転窓」タイプがあります。
(電動タイプ)
リモコンなどを使って開閉。吹き抜けや2階廊下など、手が届かない場所への設置に向いています。雨を感知して、自動で閉じるセンサー機能付きもあり。
枠とガラス
【網入りガラスの一例:LIXIL】
https://www.lixil.co.jp/lineup/sash/kodawari/skytheater/outline/
●室内側の枠(フレーム)
天窓の室内側の枠は、木枠(パイン集成材など)であることがほとんど。断熱性や耐久性などに優れ、見た目の美しさが魅力です。
しかし、木枠は湿気に弱いのが少々ネック。浴室や洗面所といった湿気が溜まりやすい場所には、内側の枠が樹脂製になっているタイプがおすすめ。
●ガラス
遮熱性に優れる、アルゴンガス層を設けたLow-E複層ガラスなどがおすすめ。
ほかにも、眺望を重視するなら「透明合わせガラス+強化ガラス」、眩しさの軽減やプライバシーを確保するなら「型板網入りガラス+強化ガラス」、割れた際の飛散を防ぐなら「網入り透明ガラス+強化ガラス)など、複層ガラスの組み合わせにもこだわりましょう。
天窓(トップライト)をおしゃれに取り入れるポイント
天井や壁面の仕上げは光を拡散しやすい明るい色調がおすすめ
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天窓からの光をお部屋に効率よく拡散、分配するなら、壁や天井は暗い色調のダークカラー系より、明るめの色にしましょう。
オフホワイトやアイボリーなど、温かみがありながらも光を反射しやすいカラーが特におすすめ。
塗り壁調壁紙など凹凸感のあるテクスチャーを選ぶと、反射光の効果も相まって、壁や天井の素材感をより生かしやすくなります。
枠無し天窓なら景色を切り取ったかのようなおしゃれな見た目に
【部屋側に枠がない天窓の施工例:VELUX FCM】
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最近注目されているのが、室内側から枠がみえず、空をきれいに切り取れる天窓です。
日本の住宅に多い陸屋根(平屋根)や、傾斜が緩やかな屋根でも使うことができ、交換時期がきても取り外しや交換が楽々。
室内の立ち上がりは、壁や天井と同じ仕上げができ、天窓を等間隔に並べて設置すれば、デザイン性もUP。
天窓(トップライト)を取り入れるなら参考にしたいおしゃれな天窓インテリア実例16選
リビング・ダイニングの天窓インテリア実例 4例
8連の天窓を連ねた9×7mの大空間
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隣家が迫る立地に建てられた、木造在来工法の家。
立地する切妻屋根に設置した8連の天窓が、9×7mの大空間に開放感をもたらします。
2階リビングと繋がる半戸外の空中テラス
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2階リビングに隣接するテラス上部に天窓を、さらに床部分に開口部を設けた例。
半戸外のテラスには屋根まで突き抜けるアオダモを植え、天窓から降り注ぐ光が、階下まで降り注ぎます。
リビングと半屋外空間のデッキに光と風を通す
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山間の集落に建てられた家。
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リビングや南西側の半屋外デッキまで、心地よい風が吹き抜けます。
色ガラスを通して様々な色味と光の強弱を演出
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間口の狭い接道面以外、三方に住宅が近接する敷地に建てた家です。
天窓を複数設けた2階は、LDKを緩やかに仕切りながらも、光と風が流れる一続きの空間。
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天窓のカラーガラス効果で光のグラデーションが生まれ、リビングまわりが幻想的な雰囲気に。
キッチンの天窓インテリア実例 4例
キッチン上部の天窓でパントリーまで光を届ける
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敷地の三方が道路に面しているため、2階に半屋外空間を設けた家。
キッチン上部以外に開口部を3カ所設け、風と光が流れるようプランニングしています。
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2階キッチン~ダイニング~アウトドアリビングの床は、白化粧タイルで統一。
カーブを描くキッチンパントリーにまで、明るく柔らかな光を届けます。
格子ごしの光が美しいシルエットに
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天井高のあるキッチン&ダイニングスペースの上部に、天窓を設けた例。
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木製格子ごしの光のシルエットが刻一刻と移り変わり、美しい陰影感をもたらします。
斜線制限を逆手にとり、キッチン上部を吹き抜け空間に
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住宅密集地に立つ家の2階キッチン。
斜線制限を逆手に取り、キッチン上のスペースを吹き抜けとして活用しています。
三角屋根の勾配を生かしたキッチン天窓
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板張りの斜め天井が目を引く、1.5階のLDK。
屋根勾配を生かして設置した天窓からの風景は、まるでピクチャーウィンドウのよう。
寝室の天窓インテリア実例 2例
トップライトごしに広がる星空の眺め
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東に向かって緩やかに傾斜する土地に設計された家。
ベッド真上に設置した天窓から、季節ごとに移り変わる星空を眺めることができます。
天窓付きの開放的なロフトスペース
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勾配天井に天窓を設置した、ロフトタイプの寝室。
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天窓近くには、壁一面大きな本棚を造作して、隠れ家的なスペースに。
こんな場所にも!独自の天窓インテリア実例 6例
トップライトを設えた大階段
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上部に天窓を設けた大階段は、この家にとってリビング代わりとなる場所。
思い思い好きな場所に座り、終日変化する太陽の光を感じながら寛ぐことができます。
天窓と下階から光がめぐるインナーテラス
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1階と2階の間に、半屋外の隙間スペースを設けた家です。
2階にある子世帯のインナーテラスは、上部の天窓と下階の開口部から光と風が回り込みます。
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1階にある親世帯のリビングは、勾配天井に設けた天窓から、十分な採光を確保。
上階から下階に光を落とすガラス廊下
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高い建物に挟まれ、北側斜線などの制約を受けた家。
視線や騒音などの問題から道路側に窓を設けず、建物を水平にずらした部分に天窓を設けることで、室内に光と風を取り込みます。
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2階廊下。
上階のダイニングから落ちた光が、足元のガラス床を通じて、階下まで明るく照らします。
光が届きにくい水回りスペースにも
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山と住宅地の境に位置する家の2階部分。
浴室やキッチンを備えた水回りに天窓を設置し、室内の中心も暗くならないよう工夫しています。
ガラス越しに空を眺める和室
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プライバシー性を重視して建てられた家。
2階外壁を2重壁として内側の外壁に開口部を設け、モルタル仕上げの搭状の箱をいくつも配置しています。
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1階床から梯子で上がった、畳2畳分の和室。
ごろんと寝転んで頭上を見上げると、ガラス越しに空を眺めることができます。
切妻屋根の一部に連窓を設置
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約35mと東西に細長い敷地に建てた平屋建て。
中庭や天窓を多く設けることで建物の内外を曖昧にし、家の所々に居心地の良い場所をつくっています。
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切妻屋根の一部に天窓を設置した、玄関までのアプローチ。
帰宅時にほっと気持ちが落ち着きそうな、光と風を取り込めるスペースです。
まとめ
今回は天窓をテーマに、取り入れる際の注意点やおしゃれな実例をご紹介しました。
懸念事項が多い印象の天窓ですが、メリットやデメリットを理解した上で、生活の質が向上すると判断されたなら、積極的に検討してみるのがおすすめ。
光と風が心地よく流れる居心地よい暮らしを、体感してみてくださいね。