【3Dプリンター住宅実例10選】海外を中心に最新実例を住宅のプロが解説
建材などの高騰により、住宅の建築費はどんどん高くなっていて、購入を躊躇する人も増えています。
そんななか、注目を集めているのが、3Dプリンターで出力した住宅です。
まだこれからの分野ではありますが、1000万を切る金額で住宅が手に入るなら検討したいと思われる方が多くいらっしゃいます。
特に、子育てが終わり夫婦二人の生活になり、必要最低限の住まいを求めていたり、引退して地方での居住を考えたりという方から熱い視線が注がれています。
また金額面だけでなく、CO2排出量の削減、人材不足の解決法としても注目されています。
そこで今回は、2023年10月の現時点での3Dプリンター住宅について解説します。
目次
住宅のプロが解説!3Dプリンター住宅の現在地
3Dプリンター住宅とは?海外含めた現在地も解説
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3Dプリンターで出力した住宅は、「3Dプリント住宅」とも言われます。
大型の3Dプリンターのノズルから、モルタルなどの構造要素を出して積み重ねていき外壁などを造る住宅のことを指します。
現場で何人もの職人が住宅を作り上げていくような工程がなくなり、早く効率的に、人材も少なく住宅を作ることができることから注目を集めています。
日本国内では、セレンディクス株式会社が2023年8月2日に「日本初 待望の二人世帯向け3Dプリンター住宅 serendix50を竣工」したことを発表しました。
これは二人世帯向けの住宅で、現場での施工時間はなんと44時間30分、販売価格は550万円です。
建物は1階建ての平屋で、面積は50平米、キッチンやトイレ、お風呂なども含まれています。
日本では建築基準法をクリアしなくてはならないため、ただ3Dプリンターで出力した住宅というだけでは販売が難しく、クリアするための工夫がさまざまに開発されています。
一方、海外では3Dプリンター住宅がすでに販売されていっています。
たとえばアメリカ・テキサス州では、3Dプリンター住宅群が建設中で、100棟が作られる予定です。
こちらは140〜195平米と面積が大きく、3〜4LDKで、内装も作り込まれており、価格は約6800万~8600万円とのこと。
ですがクリーンで、通常の住宅比べると安くできるとモデルルームが公開されており、すでに購入者もいるそうです。
今後は国内外ともに3Dプリンター住宅の安全性が保障されていくことで、ますます広がることが予想されます。
3Dプリンター住宅のメリットとデメリットを整理します。
3Dプリンター住宅のメリット
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日本で3Dプリンター住宅が注目される最も大きな要素は、価格の安さです。
もちろん、広さや内装で使われる建材、キッチンやバスなどの設備の価格によって変わってくるところはあります。
ですが、関わる人数や職種が少なくすみ、また工期も短くなることから、同じサイズの同じ設備の住宅よりも安く造ることができます。
特に現在は木材の価格が高騰していますから、木材を使う量が減ることも価格をおさえられる理由です。
メリットとしては、関わる人数や職種を減らすことができるので人材不足を解消できることや、工期が短く済むということも挙げられます。
材料の無駄も出ず、CO2排出の削減もできるとされています。
3Dプリンター住宅のデメリット
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3Dプリンター住宅のデメリットは、まだ日本国内では希望すれば誰でもすぐに購入できるという状況にないことです。
まず、対応できる企業が限られており、建築基準法や安全性をクリアするために、まだしばらくは検証が必要になります。
つまり、現状では大量に供給できる状況にはありません。
ですが、数年後には住宅建築の選択肢の一つになる可能性はあります。
3Dプリンター住宅のデザインについての可能性
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3Dプリンター住宅は、カーブも得意です。
そのため、これまでのような直線の住宅とは異なり、自由なデザインの住宅が造れるようになる可能性に満ちています。
もちろん、素敵なデザインの住宅を作るには、デザイン力も必要になりますね。
後悔したくない!気になる情報を事前に押さえておこう
3Dプリンター住宅の耐用年数・耐震性は?
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モルタルを積み上げる形で作られる3Dプリンター住宅は、強度はコンクリート並みにあるとされています。
つまり、木造よりも耐用年数は長くなります。
耐震性については、すでにお伝えしているように、これからまだ検証も必要ですし、建築基準法に合わせていく必要がありますが、少しずつ解決されていくのではないかと予想できます。(すでに建てられた建物は、鉄筋を入れることでクリアしています)
日本初の3Dプリンター住宅を竣工したセレンディスク株式会社は、兵庫県西宮市にあり、阪神淡路大震災を経験した土地だからこそ耐震性にも注力しています。
3Dプリンター住宅の水回りは一般住宅と変わらず設置できる?
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基本的には、設計通りに水回りを設置することができます。
設計時に配管部分を入れておけば、出力するときに設備配管スペースを確保されるので配管することができます。
現在アメリカで進められている3Dプリント住宅群では、2バスルームのランドリールーム、アイランドキッチンなどが備わった住戸が発売されています。
ちなみに、外壁は2重構造になるので断熱性能もあります。
つまり一般的な住宅と同じ内容の住宅を作ることができます。
3Dプリンター住宅は2階建ては可能?
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日本国内の現在の3Dプリンター住宅は、平屋です。
おそらく技術的には2階建ても可能なのではないかと思いますが、建築基準法などの問題などがクリアできていないのでまずは平家からスタートしているのではないでしょうか。
アメリカの住宅群も2階部分は通常の木造で作られています。
ですが、広く世界を見れば、3Dプリンターで2階建ての住宅も造られています。
画像は、ドイツで建てられた2階建て住宅です。
現在セレンディクス社の3Dプリンター住宅は、工場でプリントした構造体を現地で組み上げています。
一方、海外では現地で大型の3Dプリンターから直接出力されることが多いようです。
こちらのドイツの住宅も、現地で2階建てに対応できる3Dプリンターを設置して出力して建てられています。
3Dプリンター住宅実例10選
海外の3Dプリンター住宅実例8選
工法組み合わせの2階建:ICON【アメリカ】
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こちらは2021年にテキサス州に完成販売された3Dプリンター住宅です。
1階は3Dプリンターで出力し、2階部分は木造住宅で、それがデザイン上の特徴にもなっています。
室内は、部屋の角がカーブしているということ以外は、一般住宅とほとんど変わらない仕上がりになっています。
屋根付きのポーチ、広いLDKにベッドルームがあるプランで、4棟が建てられました。
価格は74万5000ドル〜という金額で、日本の現在の流れのようなとても安い住宅として建てられているわけではありません。(ただし、アメリカでは手頃な住宅として売られています)
アメリカで3Dプリンター住宅の施工を先駆けて手掛けるICONが施行しています。
3Dプリントハウス:メキシコ
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こちらはホームレス対策に建てられた3Dプリントハウスです。
2LDKで毎月のローンの返済は約400ペソに設定されているそうです。
室内は、3Dプリントそのままの部分と仕上げがされた部分がありますが、シンプルな仕上げながらメキシコらしいカラフルなインテリアで可愛らしくまとめられています。
3Dプリンター住宅をどのような目的で使うかは、国や地域によって異なることがわかります。
プロジェクト・マイルストーン:オランダ
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オランダに建てられたこちらの住宅は、外観はとてもシンプルですが、内装インテリアはとても素敵にまとめられています。
室内は、3Dプリントのままの場所は色が塗られていて落ち着いた雰囲気を作っています。
オランダでは、決して手頃な価格ではありません。(約1400ドル/月)
間取りは2LDKで、3Dプリンターのカーブをうまく利用して家具が配置されています。
Apis Corの3Dプリンターハウス:ロシア
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こちらはアメリカの会社がロシアに建てた3Dプリンター住宅です。
イエローに外壁が塗られ、円形型は3Dプリンターの自由さを表しているような可愛らしい外観です。
こちらは一人暮らし向けの住宅で、約37平方メートル、1LDKです。
価格は水回りなど基本設備付きで10,134ドルで建てられるとされています。
大量供給のモデルハウス:アメリカ
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テキサス州に3Dプリンター住宅100棟が計画されています。
そのモデルハウスがこちらの画像です。
建物は平家で、47万5000ドル〜。
間取りは3〜4LDKで約140〜195平方メートルです。
室内は、ホワイトでまとめられていて明るく、とても広々とした空間になっています。
屋根部分は木造で組まれていて、天井高が高くなっているのも広く感じるポイントです。
大型の建物も建設可能:ドバイ
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2016年に世界初の3Dプリントのオフィスを建設したドバイ。
住宅についても建設を進めています。
画像の住宅は、2階建て(鉄筋が入っています)で、640平方メートル、高さも9.5メートルあります。
広々とした贅沢な空間は、ドバイらしいとも言えますね。
2階建て住宅:ドイツ
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こちらは、3Dプリンター住宅の技術者と建築家が共につくったドイツの2階建て住宅です。
内装の写真を見ると、3Dプリントの壁はカーブが優しくて、やわらかい雰囲気を作っています。
カーブにうまく暖炉が組み込まれているところも必見です(薪収納場所もあります)。
円形の部屋がおしゃれ:アメリカ
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こちらは東オースティンにある3LDKの3Dプリンター住宅です。
アメリカで3Dプリンター住宅を先駆的に進めるICONの施工です。
建物は2棟から成っていて、片方は2000平方メートルの3ベッドルーム、もう1棟は350平方メートルの1ベッドルームです。
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外壁の連なる半円が内装に現れていて、面白いインテリアを作っています。
画像はご用意できなかったのですが、室内側も半円を作り円形のような部屋も作られていました。
日本の3Dプリンター住宅実例2選
高島屋の2023年福袋:Sphere(スフィア)
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2023年の福袋として大きな話題になった3Dプリンターの小屋(タイニーハウス)が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
1棟限定で抽選販売となり、話題性もあり多くの応募がありました。
こちらは約10坪の球体のような形で、価格は330万円です。
小屋として作られたので水回りなどはなく、プラスアルファの空間として利用されることを想定しています。
セレンディクス社が手掛け、2022年10月に同じデータで6棟が完売しています。
また2023年5月には、長野県の整骨院の施術スペースとして、初の商用利用が実現しました。
日本初 二人世帯向け3Dプリンター住宅:serendix50
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3Dプリンター住宅として、2023年7月に竣工したserendix50は大きな話題になりました。
今後の日本の住宅業界に変化をもたらす存在です。
延べ床面積は50平米、1階建て平家、価格550万円です。
間取りは1LDKで、寝室、オープンキッチンのLDK、水回りというプランです。
60歳以上の夫婦2人の居住を想定して建てられました。
外観は、3Dプリンター住宅の特徴をそのまま残していますが、フラットに削り色を塗ることも可能です。
セレンディクス社は2018年創業の会社で、「住宅ローンに縛られることなく、高性能かつ安全・安価な家を誰もが手に入れられる社会の実現を目指しています」とし、住宅ローンを組まずに購入できる住宅の供給を目指しています。
今後はさらに大きな面積で、価格を抑えた3Dプリンター住宅も開発する予定だそうです。
まとめ
3Dプリンター住宅は、世界的に見てもまだこれからの分野になりますが、ネットユースなどでも話題になっているように注目度の高い施工方法です。
建築材料が高くなり、人出も足りない状態ということから、一つの解決策になるのではないかと考えられています。
また、環境面でも二酸化酸素排出量を少なくするほか、持続可能性などの大きな期待が寄せられています。
ドバイでは、2030年までに建物の25%を3Dプリントにするという計画もあります。
この記事では、現時点で建てられている3Dプリンター住宅をご紹介いたしました。
日本国内では、まだ実現されている戸数が少なく、解決しなくてはならないことも残っています。
ですが2023年は、日本の3Dプリンター住宅が大きな一歩を踏み出したと言ってもいいでしょう。
セレンディクス社には、特に2人世帯からの問い合わせが多いそうです。
夫婦2人で、賃貸で住み続けることが難しい人や、子どもが巣立ってから2人の生活に合ったサイズの家を探している人、地方に移住することを考えている人などが注目していることがわかります。
まずは、その人たち向けの住宅がメインにつくられていくことが濃厚でしょう。
そして、もっと将来は、さまざまなサイズの3Dプリンター住宅が作られ、住宅の一つの選択肢になっていきそうです。