2021/04/12
【ル・コルビジェの名作ソファをその生涯とともに味わう】おすすめコーディネート例もご紹介
「ル・コルビジェ」の名前を聞いて「国立西洋美術館」をデザインした人物だと思い浮かべる人や、「有名な建築家」だと答える人が多いでしょう。そんな有名な彼のデザインしたソファは、彼の建築作品同様、モダンで無駄のない機能的なソファです。
今回はそんなル・コルビジェのソファの魅力と特徴を交えて、コルビジェソファを使ったコーディネートをご紹介していきます。「コルビジェ大好き」な方や「モダンインテリアを作りたい」方など、モダンやシンプルスタイルのインテリア作りの参考にしてみてください。
コルビジェの生涯とその功績に迫る
近代建築の巨匠「ル・コルビジェ」とは?その人物像について
スイス出身のフランスで活躍した建築家であり、都市計画家であり、画家でもあるル・コルビジェは、「フランク・ロイド・ライト」や「ミース・ファン・デル・ローエ」と並び「近代建築三大巨匠」の一人に数えられる偉大な建築家として世界的に有名な人物です。
20世紀を代表する建築家と言われ、「近代建築の礎を築いた一人」であり、彼の理論と著作は建築作品と並んで大きな影響力をもち,日本からも「前川國男」や「坂倉準三」「吉阪隆正」が彼のもとに学びました。
鉄筋コンクリートを利用した装飾のない平で滑らかな壁面処理と、伝統から切り離した合理性を信条とした「モダニズム建築」の提唱者として後の世にも影響を与えた人物として、世界中の人に知られています。
現代に影響を与えるコルビジェの建築とデザインの構築
2016年には、ル・コルビジェが設計した「国立西洋美術館」を含む、代表的な17の建築作品がユネスコ(国連教育科学文化機関)により「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」として世界文化遺産に登録されました。今までコルビジェを知らなかった層にも彼の名前は知られることとなったでしょう。
登録された17作品の中でも、世界的に有名なものに「サヴォワ邸」がありますが、この作品はコルビジェが提唱した「近代建築の5原則」を具現化した作品と言われています。この「近代建築の5原則」に代表されるように、彼は感覚的なものではなく、論理的な思考または実証的な考えでもってデザインを構築するデザイナーです。
他にも、彼の提唱した「モデュロール」という尺度体系も、人体の寸法と黄金比、フィボナッチ数列に基づいた論理的なものです。例えば、フランスの「ユニテ・ダビタシオン」(17作品のうちの一つ)は近代建築の5原則に加えてモデュロールを駆使して設計した代表的な事例で、現代の高層住宅へ通じる先駆けのような建物となっています。
このように上に紹介した2つの建築物だけでも「近代建築運動への顕著な貢献」と言われる所以を鑑みることができます。
ソファと合わせてコーディネートしたいコルビジェの家具
コルビジェはソファ以外にも家具をデザインしており、その中でも「LC4」という寝椅子(シェーズロング)は世界的に有名な椅子です。ピエール・ジャンヌレとシャルロット・ペリアンと共同でデザインされたこの寝椅子は「人間工学」や「機能主義」といったコルビジェらしい要素によって構成されています。
ソファを配置したリビング空間に合わせて置いたとしても、寝椅子の与えるダラけた印象はなくスタイリッシュな生活空間という印象を与えてくれるので、コルビジェのソファを置いたクールな空間においてもイメージを崩すことはありません。
「LC10」シリーズのガラスとスチールのテーブルは、無駄のないシンプルなデザインであり、天板が透明度の高い15mmのガラスであるため視界を邪魔することがなく、リビング全体をスッキリとした印象としてくれます。平面構成的なコルビジェのソファと合わせることでよりシャープな印象となり、機能的で効率的な洗練されたモダン空間を演出してくれるアイテムです。
コルビジェのデザインは彼のデザイン理論に則って規則的にデザインされているので、アイテム同士の相性が良く、ソファに合わせる家具に迷った時はコルビジェのデザインしたアイテムを採用するのもおすすめコーディネートと言えます。
【建築物のような美しさ】コルビジェのおすすめソファの魅力を詳細に説明
存在感のある重厚な「LC2」
1928年に発表されたLC2ソファは、「最小の構成で最大の快適性を実現することを目的としてデザインされたソファ」であり、通称「グランコンフォール(大いなる快適)」とも言われています。ニューヨーク近代美術館にも永久保存されている「伝説のソファ」としても有名で、現代でも世界中で愛されいる名作になります。
スチールパイプのフレームに、もっちりと厚みのある各パーツのクッションで構成されたシンプルなデザインでありながら、存在感のある重厚な印象を与えるソファです。アームと背もたれのクッションも厚みがあるのでやや座面が狭く設定されおり、座面の高さが47.5cmと他のコルビジェのソファより高めなのが特徴的です。
ブランド:Cassina(カッシーナ)
価格:(3人掛け)¥1,419,000〜(税込)/(2人掛け)¥913,000~(税込)/(1人掛け)¥572,000~(税込)
サイズ:(3人掛け)W180×D70×H66cm/(2人掛け)W130×D70×H66cm/(1人掛け)W76×D70×H66cm
素材:スチールパイプ/スチール/ポリウレタンフォーム/フェザーパッディング/ポリエステルパッディング/グライド/ファブリック/レザー
スッキリ広めの「LC3」
LC2ソファからの派生で生まれたLC3は、LC2と似ていますがこちらはシングルクッションで構成されており、LC2より幅と奥行きが広くゆったりと腰掛けられ、高さと座面高が42cmとLC2より低いのでLC2よりもスッキリとした印象のソファになっています。
高級感や重厚感重視ならば「LC2ソファ」、部屋を広く見せたかったり、ゆったりと腰掛けたいならば「LC3」といったふうに選び分けると良いでしょう。
ブランド:Cassina(カッシーナ)
価格:(3人掛け)¥1,628,000~(税込)/(2人掛け)¥1,067,000~(税込)/(1人掛け)¥704,000~(税込)
サイズ:(3人掛け)W237×D73×H60.5cm/(2人掛け)W168×D73×H60.5cm/(1人掛け)W99×D73×H60.5cm
素材:スチールパイプ/スチール/モールドポリウレタンフォーム/ポリウレタンフォーム/フェザーパッディング/ポリエステルパッディング/グライド/ファブリック/レザー
オリジナルは1点しかない幻のソファ「LC5」
元々は1934年にコルビジェが妻のイヴォンヌとともにパリのアパートに引っ越した際、コルビジェが自身の昼寝用のために設計したソファで、製品にならないはずだったため「幻のソファ」や「永久欠番」と呼ばれるソファでした。そのためオリジナルは1脚しかなく、現在はラロッシュ邸に収められています。
コルビジェが自分の「くつろぎ」のために作り出したというデイベッドソファであり、アームのない開放感のあるデザインと大人がゆうに寝転がれるワイドな大きさで、リビングのくつろぎ空間に適したソファです。
ブランド:Cassina(カッシーナ)
価格:(3人掛け)¥1,111,000~(税込)/(2人掛け)¥836,000〜(税込)
サイズ:(3人掛け)W255×D78×H73cm/(2人掛け)W173×D78×H73cm
素材:スチールパイプ/ポリウレタンフォーム/フェザーパッディング/グライド/ファブリック/レザー
コルビジェのおしゃれソファコーディネート例6選
①LC2ソファを使った無骨でクールなモダンスタイルコーディネート
コクリートの壁や天井と大理石の床は一見冷たい印象を与えてしまいますが、暗色のラグやダークカラーのウッド素材、本革の野生的な触感が無機質な印象を和らげてくれます。
素材の組み合わせとしては、無機質なものと有機質なもののバランスがとれているので、生活環境という観点でも難を感じさせることはありません。LC2ソファの直線的なラインと機能性は、モダンインテリアのストイックなイメージそのものであり、モダンスタイルの中でその存在感を示しています。
またLC2のように高さのあるソファの場合、靴を履いたままで利用する環境や、天井が高い部屋などでは、空間を支配してコントロールしてくれるので、大きな部屋を持て余している方などにもおすすめのアイテムといえます。
ホワイトのLC2ソファを使ったナチュラルモダンスタイルコーディネート
シンプルなデザインであるLC2は、黒のような強い色ではインパクトと無骨な印象で重厚感のあるアイテムとなりますが、白や茶色などその他の色の場合は、シンプルなデザインと相まって無駄な主張をすることなく空間のインテリアと馴染みます。
上の写真は、ナチュラル系のアイテムの組み合わせや、ウォールデコレーションが非常に上手いコーディネートでまとめられているので、主張する力の強くないホワイトのLC2が頑張らなくても、インテリア全体がまとまっていることで快適な印象を受けます。
猫足のテーブルの高さが高めであり、LC2の高めの座面高とも差が少ないことと、奥のウッドのテーブルとLC2の背もたれの高さにも差が少ないことから、家具の高さがごちゃつかず、すっきりとした印象を与えているのもコーディネートのポイントです。
LC3ソファを使った目線の重心を下に集中させるテクニックコーディネート
LC3ソファは全体の高さが60.5cmと低めでありながらワイドな横の広がりがあるので、部屋を広く見せる効果が期待できるソファになります。
上の写真のように、天井などの上の方は白色や透明など明るく、床に近い方は黒や茶色などの暗い色にすることで、色彩の重心が下に集中することでバランスの良いインテリアとなります。
さらに背が低く、横に広がるアイテムであるLC3やテーブル・ベンチを使うことで、視界の重心も下に集中するので、バランスの良い心地よい空間となります。
フラットなLC3ソファで窓の外の自然を取り入れるモダンコーディネート
高さが低めなLC3ソファは、大きな窓の前にソファを置きたい場合や、背後に絵画などを飾りたい場合などに活躍します。
上の写真のLC3ソファは、スチールパイプのフレームを黒のカラー塗装仕上げにしたもので、白のクッションとのコントラストが明確なメリハリのついた印象になっています。
部屋全体もまた白と黒のアイテムを基調としたシンプルモダンな空間なので、通常のシルバーのフレームタイプのような都会的なものよりこの部屋のインテリアにマッチしています。
都会の真ん中のマンションの一室のようなお部屋の場合、モダンスタイルのインテリアに観葉植物を取り入れたりしますが、自然の中に建っているお家ならば、せっかくの外の自然の風景を大きな窓からインテリアとして取り入れてみるのもありです。
ブラウンのLC5ソファをメインにLC3のソファを組み合わせたコーディネート
LC5はデイベッドソファであるため幅の広い大きなソファですが、アームがないのでそれほど圧迫感を感じさせません。また、脚が他のコルビジェのソファより長いのでスッキリとした印象になり、複数のソファを組み合わせてコーディネートする場合でもごちゃついた印象も抑えています。
上の写真に使われているLC5のブラウンのレザーに黒の塗装仕上げのフレームは、落ち着いた印象を与える色合いですね。LC3もまたグレーのファブリックタイプにグレー塗装のフレームと柔らかな印象のため、この空間がくつろぎや休憩のための空間として演出されていることがわかります。
多くの人がやりがちなことに、大きなソファに対して大きなリビングテーブルを配置しがちですが、実際リビングテーブルに置くものはそれほど多くはなく、リモコンや飲み物程度のものくらいです。
上の写真のように必要な時に近くに持ってこられるような小さめなコーヒーテーブルなどを使用すると、部屋が狭くならず実用的でありながらスッキリとしたコーディネートに仕上げることができます。ぜひ参考にしてみてください。
LC5を使った高級感あるホワイトモダンコーディネート
LC1のチェアにアルコランプなど、モダンアイテムとともにホワイトのレザータイプのLC5をコーディネートしたスタイルです。白をベースに黒・シルバー・茶色の最小限の色の組み合わせで空間にメリハリをつけています。
背景である壁面が同じく白であることで、ソファのクッション部分と同化しており、空間が広く見える効果がありますね。ソファのステンレスのフレームと同じ形の脚をしたテーブルを用いることで、統一感を演出し、機能的で無駄のない美しいコーディネートになっています。
機能性を求め無駄のないデザインが魅力であるLC5のソファは、このようなシンプルで機能的なアイテムと合わせてコーディネートすると、そのシンプルな美しさが際立ちます。
最後に
ル・コルビジェのソファは、彼の名前を知らない人でもどこかで見たことのある、世界中で愛されてきたソファです。世界中で愛される理由には、「シンプル」であることによって家庭から公共のラウンジまで使用場所を選ばない汎用性と、「機能的」で座り心地の良さや使い勝手の良さがある利便性など、「ソファ」としての真価を突き詰めたデザインであるからだと思います。
インテリアが好きな人が憧れる彼のソファが好かれるのは、「彼が偉大な建築家やデザイナー」だからだけではなく、そのデザインの根元に「家具としての機能的価値」が高いからだと思います。そんなコルビジェのデザインしたソファを、ぜひインテリアに取り入れてみてください。
参考:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「ル・コルビュジエ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%A5%E3%82%B8%E3%82%A8
参考:ル・コルビュジエ財団公式サイト(海外サイト)
http://www.fondationlecorbusier.asso.fr/corbuweb/default.aspx
参考:Cassina ixc.社HP
https://www.cassina-ixc.jp/index.html
参考:Cassina社HP(海外サイト)
https://www.cassina.com/en