2020/02/24
【モダンチェアならこの5選】時代を超えて愛される名作を小特集
インテリアの中でも椅子は、座り心地と見た目の美しさ、どちらも兼ねそろえていなければいけません。だけど、モダンチェアは名作ぞろい。どの椅子も魅力的だけど、ひとつひとつは上質であるがゆえにお値段も張ります。せっかくの家具選び。失敗したくないと慎重になってしまいますよね。
モダンチェアには、一脚ずつ個性があります。
個性は見た目だけではなく、その椅子がもつストーリーによってもつくられます。モダンチェアの歴史や背景を知ることは、自分にぴったりの椅子が見つける手助けをしてくれるでしょう。
モダンチェアの魅力。この3つは抑えておきたい
おしゃれなイメージのあるモダンチェアですが、一体その魅力はどんなところにあるのでしょうか。まず始めに、モダンチェアの魅力を3つに絞ってご紹介します。
合理的でスタイリッシュなデザイン
モダンチェアといわれて、シンプルでスタイリッシュな椅子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
モダンチェアが生まれたのは、近代化がおしすすめられた時代です。
バロック様式の時代に見られたような装飾は取り除かれ、機能に沿った合理的なデザインが重視されました。そのため、シンプルで洗練されたデザインの椅子が多くみられます。
多様な素材と自由なデザイン
モダンチェアが生まれた時代は、金属やプラスチックなどの新しい素材や加工技術が開発された時代でもあります。
1952年に発売された、アルネ・ヤコブセンのアントチェアは、当時の画期的な成形合板や加工技術を利用して制作されました。アントチェアは木を曲げる技術によって世界で初めて背もたれと座面を一体にすることに成功した例として有名です。
このように、モダンチェアではそれまでになかったような新たな技術によって、今までにないデザインが多数生み出されました。
木材を使った暖かみのある北欧モダン
合理的であることが重要視される一方で、19世紀後半は人間味のある暖かいデザインも注目されます。そのとき注目されたのが北欧の家具です。
冬が長く、家にいる時間が長い北欧では、自宅を居心地の良い空間にしようという意識が強く持たれています。そのため、北欧インテリアは暖かみがあり居心地のいいデザインが特徴的です。
モダンチェアの歴史
19世紀は、建築・家具・絵画などのあらゆる分野でモダニズムが起こった時代でした。特に建築分野では、バロック様式など、それまでの装飾的な建築を否定し、機能的で合理的なデザインがよしとされました。それと共に、インテリアのデザインでも機能性が重視され始めます。
1920年代は国際性が重要視され、どんな地域でも普遍的に用いられるようなデザインの追求が行われました。そのため、建築のデザインは直線を用い、内部の間仕切りなどが少ない、自由な空間づくりが追求され始めます。
間仕切りのない建築において、インテリアは空間の仕切りとしての役割を求められることになりました。近代建築の巨匠といわれるフランク・ロイド・ライトは、背もたれの高い椅子を使って、ダイニングテーブルを囲むことによって、広い部屋の中に狭い空間を作り出しています。
1950年代には、金属やプラスチックなどの新しい素材を使用した椅子がつくられるようになります。また、加工技術の進歩により、木材の加工などもより自由にすることが可能になりました。
1952年に発売された、アルネ・ヤコブセンのアントチェアは、当時の画期的な成形合板や加工技術を利用して制作されました。アントチェアは木を曲げる技術によって世界で初めて背もたれと座面を一体にすることに成功した例として有名です。
このように、新しい技術の開発は、それまでになかったような機能的で自由なデザインを可能にしました。
19世紀後半に入ると、行き過ぎた機能主義への反発から、人間性が求められるようになります。この時代に注目されたのは、素材や地域性を活かした北欧のインテリアでした。
フィンランド出身の建築家アルヴァ・アアルトの「stool 60」は、究極にシンプルながら素材のよさを引き出した、暖かみのあるデザインで、1933年に発売されてから現在までに800万脚以上もつくられたといいます。
このように、モダンチェアの歴史は近代化による技術革新とともに進んできました。近代主義が広まったこの時代は、それまでの様式重視のデザインから一変、機能に沿ったデザインが求められ、それと同時に人間性のありかたも問いかけられました。
複雑な時代背景や技術の進歩による自由なデザインが、モダンチェアの魅力をより高めることにもなったのでしょう。
モダンチェアを堪能するなら。おすすめしたい名作5選
モダンチェアには、いわゆる名作と呼ばれるものが数多く存在します。ここでは、そんな中でも選りすぐりの5脚をご紹介します。
①ザ・チェア(PP503 THE Chair)【PPmobler】
PP503(通称ザ・チェア)は1950年、ハンス・J・ウェグナーによってデザインされました。ウェグナーは生涯で500脚以上の椅子をデザインしていますが、ザ・チェアはその中でも最も完成度の高い椅子といわれています。
ウェグナーの代表作であるこの椅子は、シンプルで一見面白みのないように感じてしまうかもしれません。そのせいか、今では世界中で愛されるこの椅子も、発売当時は「みにくいアヒルの子」と揶揄され、評価を得ることができませんでした。
しかし発売から10年後、ジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンが大統領選のテレビ討論会でこの椅子を使用したことから、この椅子は人気を集めます。
威厳あるたたずまいのこの椅子。いつかコレクションのひとつに加えたい、と思わせる逸品です。
価格:¥705,240(税込)
サイズ:幅630x奥行520x高さ760mm
素材:アッシュ、チェリー、オーク、ウォルナット
②アントチェア(Ant Chair)【Fritz Hansen】
アントチェアは1952年、アルネ・ヤコブセンによってデザインされました。この椅子は、世界で初めて座面と背もたれを一体化した椅子として有名です。特徴的な腰部分のくびれは、合板を曲げる際にひび割れなどが入らないようにした結果できたといわれています。
アントチェアの発売後、ヤコブセンはさらに改良が重ね、セブンチェアが生まれました。セブンシリーズは背もたれや座面にゆとりが設けられ、アントチェアよりさらに座り心地のよい椅子となりました。
アントチェアとセブンチェアは、どちらもミニマムで美しいデザインが特徴的です。座り心地が改良されているという点だけを見ると、セブンチェアの方がアントチェアより優れているように思えます。しかし、アントチェアのユニークなくびれのデザインは美しく、セブンチェアにも劣りません。
価格:\55,080~\86,400(税込み)
サイズ:幅510x奥行480x高さ770mm
素材(シート):成形合板(カラードアッシュ仕上げ)
素材(脚):スチール(クロームメッキ仕上げ)
③バタフライスツール(Butterfly Stool)【天童木工】
バタフライスツールは1954年、柳宗理によってデザインされ、1956年に発売されました。発売以来、日本のモダンチェアの代表作として、日本国内だけではなく海外でも高い評価を受けています。
日本人デザイナーによってつくられたこの椅子は、和室にも洋室にも違和感なくなじみます。脚先は緩やかな曲線になっているため、畳の上でも使用できるなど、日本製ならではの細やかな配慮も魅力のひとつです。
座面の美しいカーブは、試行錯誤の結果生まれたもので、その形が蝶の羽のように見えることから、バタフライスツールという名前がつきました。高さが34㎝と小ぶりなのも、蝶のようでかわいらしいところです。
価格:\50,760(税込み)
サイズ:幅420x奥行310x高さ340mm
素材:ローズウッド板目、メープル板目
④スーパーレジェーラ(699 SUPERLEGGERA)【Cassina】
http://www.cassina-ixc.jp/img/goods/10/superleggera.jpg
スーパーレジェーラは1957年、ジオ・ポンティによってデザインされました。開発から完成まで、5年もの歳月を要したこの椅子は、重さわずか1700グラムの超軽量化に成功しています。指一本でも支えられるほどの重さのこの椅子は、幅18mmの三角フレームで形成されています。
また、座面は籐編みで作られています。この籐編みは職人の手編みで、その技術は現在では大変貴重なものになっています。
最高の技術が詰め込まれた、本当に上質な一脚。無駄なものを最大限にそぎ落とした姿は、凛としていて美しいですね。
価格:\302,400(税込み)
サイズ:幅405x奥行450x高さ830mm
素材(フレーム):アッシュ材
素材(座面):籐張
⑤パントンチェア(Panton Chair)【vitra】
パントンチェアは1960年、ヴァーナー・パントンによってデザインされました。パントンとヴィトラ社の共同で開発されたこの椅子は、世界初のプラスチック一体成型チェアです。発売当初は素材としてFPRが採用されてましたが、現在では環境に配慮してポリプロピレン製になっています。
プラスチック一体成型のなめらかなフォルムは、近未来的で目を引きます。独特なデザインであるにもかかわらず、プラスチック一体成型のシンプルさゆえ、どんなインテリアとも違和感なく組み合わせることができます。
また、その斬新なデザインは一見不安定にも思えますが、座り心地もしっかりと考慮されているので安心です。
価格:\34,560(税込み)
サイズ:幅500x奥行610x高さ830mm
素材:ポリプロピレン
モダンチェアのコーデ3選。日常×アートを表現しよう
単体でアートのように飾っても美しいモダンチェアですが、インテリアとして使うには部屋に馴染ませることも重要です。モダンチェアの美しさを引き立てる、理想のコーディネートを3つセレクトしました。
①統一感のあるカラートーンでおしゃれな印象に
インテリアをコーディネートでは、カラートーンが部屋の印象に大きく作用します。部屋に一体感を持たせるため、インテリアは同系色の色でそろえてみましょう。あまりにたくさんの色を使ってしまうと、部屋全体がまとまりのない印象になってしまいます。
また、色をそろえるときには、画像のようにモノトーンでそろえるとモダンでスタイリッシュな雰囲気にまとまります。モダンなインテリアに囲まれて、ゆっくりと落ち着いた時間が過ごせそうですね。
モノトーンだけで寂しいと感じたら、クッションなどの小物で色味を足してみるのもおすすめです。インテリアは変えなくても、小物の素材を変えるだけで季節感を出すこともできますよ。
②木製インテリアで北欧モダンなコーディネート
木製のインテリアを使ってコーディネートすると、先ほどとは打って変わって優しく暖かみのある印象に変わります。北欧モダンはこの暖かみが特徴で、シンプルながらも落ち着く部屋をつくることができます。
リビングルームなど、リラックスして過ごしたい部屋にはぴったりです。
木製の家具と合わせて白っぽいアイテムを使えば、より優しい印象に。黒っぽいアイテムを使えば、大人カジュアルな印象にすることができます。
③モダンチェアの素材感を活かした上級コーディネート
近代化が進み、技術も進歩したモダニズムの時代には、金属やプラスチックなどの新しい素材でできた椅子もたくさん作られました。異素材のインテリアを組み合わせると、カラートーンは統一されているのにメリハリのある、おしゃれなコーディネートになりますね。
部屋の主役に椅子を据えることで、さりげなくお洒落な部屋ができあがります。
最後に
モダンチェアの魅力は、機能的でシンプルかつ人間味のあるデザインです。モダンチェアが生まれたのは近代化の時代。この時代に評価されたのは、デザイン性と機能性を兼ねそろえた椅子ばかりです。ひとつひとつの椅子には、デザイナーの知恵がつまっており、そのストーリー自体にも魅力があります。
みなさんもぜひ、お気に入りの魅力あふれる一脚を見つけてください。