2022/12/29
【プロが教える】光庭でおしゃれな住宅を実現する方法!室内を驚くほど明るい空間に
「光庭」という言葉を聞いたことがありますか? その名の通り、光庭とは「庭」を意味するものですが、いわゆる中庭や坪庭とは少々異なる役割を持ちます。
住宅に光庭を取り入れるという概念は、19世紀の産業革命の時代、欧米の諸都市に人口が流入し、建物の増築を繰り返して家々が建て詰まっていった背景から生まれました。その後1904年、ドイツの建築家ゲスナーによって、初めて「光庭」のある家が計画されたといわれています。
今回は、庭を取り入れたお家を検討されている方に参考にして頂きたい、光庭の特徴やメリット・デメリット、光庭でおしゃれな住宅を実現した実例をご紹介します。
プロが教える!光庭でおしゃれな住宅を実現するポイント
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家づくりを考える際、特に都市部などでよくみられる住宅密集地域では、計画地の周囲が建物に囲まれ、採光が確保しにくいケースがあります。
そんなときに検討したいのが、光庭を取り入れたプランニング。昔から日本でも、間口が狭く奥行が深い京町家などでよく採用されてきました。まずは、光庭の特徴をおさえていきましょう。
そもそも光庭とは?
【光庭の一例】
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光庭は、採光や通風(換気)を確保、向上させる目的でつくられるもの。「ひかりにわ」や「こうてい」と読み、別名「Light court(ライトコート)」とも呼ばれます。
採光が最優先される空間のため、シンプルなつくりで、上部が吹き抜けとなっているのが一般的。外壁や外構、床材は、太陽光が反射しやすい白系色がよく選ばれるほか、壁面に窓(ガラス素材)が多く使われます。
とはいえ、必ずしも白色&シンプルなデザインに限定する必要はありません。光庭の用途などにより、素材や色を自由に選ぶことができます。
【中庭の一例】
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上の画像は、いわゆる「中庭」とよばれるもの。空間構成でいえば光庭と中庭は大きく変わらないのですが、中庭は「室内からの景観」を重視しているのが特徴です。
そのため、プライバシーを確保している屋外空間という点では同じですが、中庭のほうが、よりデザインの自由度が幅広いといえるでしょう。
光庭は「使用目的」と「生活・家事動線」を考慮した間取りにするのがポイント
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光庭を検討する際は、採光確保以外にも使用目的があるかどうかを考えてプランするのがおすすめ。
例えば、物干しスペースとしても活用したいなら「LDK⇔光庭(物干しスペース)⇔洗面室(洗濯機置き場)」のように、光庭を介してLDKと洗面室を繋ぐと、それぞれの空間を行き来しやすくなります。
さらに、クローゼットを近くに配置すれば「料理」「洗濯」「洗濯物を干す・取り込む」「衣類を収納」といった一連の流れを最小限の距離で行えるように。採光確保以外に、家事効率のアップも図れます。
代表的な光庭の間取りパターン
光庭の間取りパターンはさまざまですが、大きく以下の4タイプがあります。
【①L字型orコの字型のLDKと組み合わせる】
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LDKを「コの字型」や「L字型」にして、その近くに光庭を配置するパターン。光庭とLDKに一体感が生まれやすく、空間をより広く見せる効果が期待できます。
【②L字型orコの字型の玄関・廊下・LDKと組み合わせる】
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玄関ホールや廊下を「コの字型」や「L字型」にして、光庭を配置するパターン。さらにLDKと組み合わせることもあります。玄関まわりや廊下が暗くなりがちなケースなどに。
【③光庭を囲むよう居室をロの字型に配置する】
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光庭を囲むように、居室をロの字型に配置するパターン。3階建てなど縦方向に長いお家や、地下室付きのお家などに採用されることが多い間取りです。
【④家の端スペースを利用してI字・変形型に配置する】
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廊下やLDKの一面など、家の端スペースを使って光庭を配置するパターン。I字型や変形型などがあり、狭小地や変形地などにもレイアウトしやすいのが特徴です。
改めて光庭のメリット/デメリットを整理します
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光庭はメリットが多い一方、デメリットもあります。それぞれを比較しつつ、ご自身が計画されている住居に光庭が適しているかどうか改めて検討してみましょう。
メリット
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光庭のメリットは、なんといっても家の立地条件や周辺環境に左右されることなく、室内に光や風を効率よく届けられること。
光庭を含めた回遊動線をつくれば、居室同志の行き来がしやすくなるほか、開放感や奥行き感も生まれやすくなります。
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外部からの視線を気にせず、プライベートな屋外空間として使えるのも魅力。第二のリビングとして、お子さんやペットの遊び場として使ったり、パーティースペースとして活用したりすることができます。
また、光庭は四方を壁で囲むことが多いため、外部からの侵入が難しく、防犯面の効果も高いとされています。それでも、施錠はきちんとしておきましょう。
デメリット
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一方で光庭を取り入れると、メインとなるLDKなどの広さや間取りに影響が出ることがあります。とはいえ、あまりにも光庭の面積を狭めてしまうと、光庭の効果が得られにくくなることも。
さらに、雨水対策や排水設備をしっかり行わないと、雨水が室内や構造部に侵入したり、結露によるカビが発生しやすくなったりするリスクが。窓などの開口部が多いため、断熱性が劣ってしまうのも難点。
そのため、断熱窓や高耐候性コート・防藻機能を付加した外壁材、汚れを雨などで洗い流す低汚染塗料を採用するなど、外壁や窓、塗装の種類によっては初期費用がアップしやすい点を認識しておきましょう。もちろん、定期的なメンテナンスにかかるコストもみておく必要があります。
おしゃれに取り入れるポイント①光庭と室内空間の境界を曖昧にする
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構造的な工夫が必要になりますが、室内と光庭の床面をフラットに仕上げたり、床材の素材やカラーを揃えたりすることで、内と外が繋がった空間のように見せることができます。
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室内の床面をそのまま光庭側に伸ばすと、段差部分を腰掛けとして使えるほか、光庭と室内の境界が曖昧になって広々とした空間に。
床面をフラットにするのが難しい場合は、このように段差を生かしたプランにするのもおすすめ。
おしゃれに取り入れるポイント②開口部の位置やデザイン性にこだわる
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例えば、光庭を介した居室の片方に地窓、反対側の居室に高窓を設置するなど、向かい合う壁の窓に高低差をつけると、効率的に風の通り道をつくることができます。
光庭の窓の種類や意匠性にもこだわりたいところ。1枚ガラスの大開口スライディング窓や、フレームレス構造の窓などを取り入れると、より開放的かつ、すっきりとした印象になります。
【折れ戸タイプの一例】
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両方の袖壁におさまる全開口窓の設置が難しい場合は、上の画像のような折れ戸タイプもおすすめ。全て開け放しても収納スペースが不要となり、比較的コンパクトなスペースにも設置できます。
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玄関近くに光窓をレイアウトするなら、ピクチャーウィンドウのように見せるのも素敵。光庭がまるで絵画のように切り取られ、玄関先のアイキャッチとして効果的な役目を果たします。
おしゃれに取り入れるポイント③光が居室の隅々まで届くよう工夫を施す
【光庭近くの床に開口部を設けた例】
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特に、地下室があるお家などでは「天窓(屋根に取付けられた窓)」や「高窓(ハイサイドライト)」「リビング階段」などと組み合わせることで、家の隅々にまで光を拡散することができます。
これは光庭と似ていますが「光井戸(ライトウェル)」とも呼ばれる手法。上の画像は、光庭手前の床に開口部を設け、地階へと光を落とした例です。
【FRPグレーチングを設置した光庭の例】
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こちらは建物中央部に外部吹抜の光庭を設けた木造3階建住宅です。2階にある光庭の床にFRPグレーチングを敷き、光や風を通しながら外に出られるように工夫。グレーチングを通過した光が、1階まで降り注ぎます。
後悔したくない!気になる情報を事前に検討しておきましょう
光庭に庇や屋根をつける際は建築基準法の規定もチェック
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光庭に屋根や庇を付ける際は、建築基準法による規定を確認しておくことが大切。
これは、光庭を設置するスペースの壁(中心線)から1m以上庇や屋根が飛び出すと、その先端から1m戻った部分の面積までが建築面積に含まれるという建築基準法の規定があるためです。
特に建蔽率や容積率がシビアな土地では、それを踏まえた上でプランニングしましょう。
こんなケースに気をつけて!失敗しがちなパターン紹介
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上の画像は、外壁の一部に黒系色を選び、床材も同系色で揃えた光庭の一例。どうしても暗さが否めない印象を受けます。
光庭の壁や床は、必ずしも白系色に限るわけではありませんが、極端に暗い色を選ばないほうがよいでしょう。同じ無彩色でもライトグレーなどワントーン明るい色のほうが、光の反射効果を得られやすくなります。
おしゃれな光庭のある住宅施工実例10選
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ここからは、おしゃれな光庭のデザイン実例をご紹介します。光の取り入れ方や光庭の使い方など、ぜひ参考にしてみてくださいね。
光庭を囲むロの字型の家
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ロの字型の家の中心に、屋根のない光庭を設置した例です。光庭の壁は光を反射しやすい白色を選び、ウッドデッキの一部に植栽を配したシンプルなつくり。
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1階はもちろん2階の居室からも、季節や時間に応じて変化する光庭の様子を眺めることができます。
3階から地下室まで、建物内部を”光のクレバス”が貫く
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北向きの変形敷地をあえて選び、”柔らかく制御された光”と”斜めのラインを生かした変形の空間”を実現した住宅です。
建物は地下室付きの地上3階建て。屋根から地下の床面までは11.5mもの高さがあり、地下から見上げると細長い空が一層高く感じられます。
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建物にスリット状に降り注ぐ光は、上に行けば行くほど細くシャープに、下側のスペースに向かうと、柔らかな光に変化。
光庭を通じて連続する住居空間が、階層や用途、時間や天候に応じてさまざまな表情を見せます。
全面開放可能なダイニングと光庭を階段テラスで繋ぐ
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木造2階建て住宅に、4.5畳程度の光庭を設けて階段テラスと繋げた例。全面開放が可能なダイニングは、光庭や屋上と繋がっていて、一層の広がりを感じることができます。
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光庭の外壁の一部には、レッドシダーを採用。庭の中央にはシンボルツリーとなるヤマボウシを植えており、心地よい木陰があるテラスで寛ぐことができます。
光庭手前の床開口部から地下室へと光を落とす
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”陰影のある家”をコンセプトにした、地上2階・地下1階の木造、一部RC造の家です。
1階から地下まで渦を巻く回遊動線をつくり、建物の中心に光庭を設置。どこにいても緑と接することができます。
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上階の光庭付近の床にある開口部(トップライト)から、地階へと光が落ちた地下フロア。明るい光庭とは対照的に、地階はしっとりとした空気感や心地よい静けさに包まれます。
光庭と天窓から四季を通して優しい光を取り込む
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2階にリビング、1階に個室を配した、スキップフロアのある2階建て木造住宅です。両階の間の高さに玄関フロア(右下奥)を設け、その高さに合わせて光庭を設置。
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光庭に面した書斎コーナー。この居室スペース以外にも、子ども部屋、リビング、和室、浴室などから、緑の植栽で覆われた光庭を眺めることができます。
光庭に面するサイズ違いの窓が豊かな表情を演出
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1階と2階の間、中2階となる高さに光庭を設置した木造2階建て住宅です。
光庭に面する窓は「縁側への出入り口」「植物への水やり用」など、用途に合わせてさまざまなサイズを設置。窓を開けたり閉じたりするたび、窓廻りがリズミカルな表情を生み出します。
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さらに、光庭の外壁と室内の内装材の一部を揃えて、内と外の境界を曖昧にしている点にも注目。ひとつの大きな空間として見せ、光庭を家族団らんの中心の場に据えています。
外部吹き抜けを中央に配置した二世帯住宅
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22坪程度の土地に建つ、木造3階建ての二世帯住宅です。
道路斜線などから各階の天井高さを抑える必要がありましたが、建物の中央に外部吹き抜けの光庭(光井戸)を配置することで、視線の抜けや光を感じられる空間に。
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1階は親世帯、3階は子世帯とし、2階は2世帯共有エリア。各世帯の気配を程よく感じさせるだけでなく、開放感ももたらしてくれます。
光庭が室内に奥行き感をもたらす
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騒音や振動が激しい立地条件から、家の外部を閉じた木造平屋の例。光庭(サンルーム)を通じて外光を取り入れた空間は、視覚効果も相まってかなりの奥行き感があります。
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家の中心となる光庭の周囲は、滞在時間が長いキッチンやダイニング、リビングスペースなどでぐるりと囲んだ一方、道路側は騒音の緩衝帯として、トイレなどの非居室を配置しています。
屋内にいながら光と自然を感じる家
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家の中央に設けた吹き抜けスペースが、光庭のような役目を果たしている地上2階、地下1階の鉄骨造の家。
家の中央に高さのあるシマトネリコを植え、その近くにキッチンやリビングを配置。その周囲にある箱型の建物には、浴室や書斎、寝室をレイアウトしています。
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室内にいながらも自然の息吹が感じられる、まるで南欧の広場のような空間です。
吹き抜けやガラス床を多用して自然光を導く
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奥行の深い長屋状の敷地に立てた、3階建ての二世帯住宅。奥の部屋まで日が当たるよう、前面道路に接する南東角の場所に光庭を設置しています。
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こちらは3階の子ども室。光庭に入る陽射しが、上部のロフト部分まで優しく照らしています。
光庭の他にも、2・3階を繋ぐ小さな2つの吹き抜けや階段、ガラス床などにより、建物内部まで自然光や風が導かれるような工夫が施されています。
まとめ
今回は、光庭の特徴や、光庭を取り入れておしゃれな住宅を実現した施工事例をご紹介しました。
十分な広さが取れないコンパクトサイズの光庭でも、間取りを工夫して光庭を設置することで、室内は驚くほど明るい空間になります。光庭を取り入れたお家で、ぜひ快適な住まいを実現してみてくださいね。