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日本のインテリア市場に発見を提供し続けるmoda en casaの家具作りの裏側にある想い・仕組み

Hello Interiorではインテリアブランドの方を取材し、そのブランドにかける想いやおすすめの商品を取り上げさせていただいています。

今回は、moda en casa様です。moda en casa様は、ヨーロピアンを中心とした家庭の中のファッション・ライフスタイルを提案する企業・ブランドです。そんなmoda en casa様の常務 ロビンさんに、Hello Interiorのチーフコーディネーターの村野がお話を伺いました。moda en casaの沿革や日本のインテリアに対しての想い、おすすめ商品についてお話いただきました。

moda en casaさんといえば、高いデザイン性と裏腹にリーズナブルな価格で人気を博しています。いかにして、この高品質低価格での提供を実現しているのか、その裏話にも触れています。

moda en casaの沿革

今はヒット商品を連発するブランドも当初は輸入家具メインでスタート

moda en casa チューリップダイニングチェア

村野:本日はよろしくお願いします!
高いデザイン性で定評のあるmoda en casaさんですが、当初は輸入メーカーとしてスタートしていますよね。

ロビン:その通りです。最初はボーコンセプトから独立する形で、輸入メインでスタートしました。独立した当時はまだコンセプトが出来上がってなかったので、ボーコンセプトにないものを、椅子はイタリアから、ソファはイタリアやデンマーク、スペインから、という風に輸入していました。

そこから少しずつ、大きくてヨーロッパから運ぶのが大変なソファやマットレスを中国で探すようになったのが一つの転換点でしたね。

村野:かなり始めの頃から中国に進出されていたんですね。

ロビン:はい。

自分たちが作りたいデザインや家具をより多くの人に提供するためには、中国で家具の生産を進めることが大事だと考えました。やはりオリジナルでないと自由度は低いので、デザイン・コンセプトの伝わる工場と提携しました。

村野:それから、徐々に自社の家具生産を強めていったんですね。

ロビン:そのとおりです。

moda en casaのポリシー・特徴

自由度の高いデザインに始まったブランド「好きなものにこだわる」

ロビン:ボーコンセプトの頃も、もちろん色だとか大きさだとかは、自分たちで見て決めて商品選びをしていました。

しかし、その中でどうしても自由がないな、と思ってしまう場面があったんです。既製品やデザイナーが考えたもの、工場が作りやすい・得意なもの。そういった制約の中で、コンセプトの合う物を探して選ぶということをしていました。

でもやっぱり、自分たちの好きなものを自由に編集したり、セレクトしたりしたい、という想いが根底にあったので、moda en casaを立ち上げたんです。

このような成り立ちですので、会社の中で一番主役となる商品選びの軸としては、すごくシンプルで当たり前のことですが、「自分たちが好きなもの」を選ぶことを大切にしています。

村野:自分が好きになれるか、というのは非常に重要ですよね。同じ家具でも好きな気持ちを込めてこだわり抜いた家具は一味違います。

ロビン:そうですね。
また、自分たちが好きであることが条件と言っても、この商品を自分の家に入れたいか、という主観では見てはいません。

それよりも
「なぜmoda en casaがこの商品を取り扱うか」
「この商品はどんな役割を果たしてくれるか」
ということの理由がしっかり納得・理解できることを重視しています。

日本特有の住宅事情の中でも海外の家具を楽しんでもらいたい

村野:ちなみに、役割という話が出たのでお聞きしたいのですが、moda en casaとして、日本のインテリア業界に対して、どんな役割を担おうとしているか、お伺いしてもいいでしょうか?

ロビン:セレクトだけでなく商品づくりを始めたのは、日本特有の住宅事情の中でも海外のインテリアを扱えるようにしたいと考えてのことです。

ヨーロッパのメーカーから既製、出来上がったものをセレクトして持ってくるだけだと、日本の住宅サイズや日本人の体型、予算に合いません。だから、余計にセレクトに限界を感じていたんですね。

今、輸入するものはそうした条件をクリアしてものにしていますが、販売していたときはお客さんがたぶん無理して買っているな、という感覚があったんですよね。お店のコンセプトを気に入っていただき、どうしてもこれが欲しいから、少し我慢して使ってもらっているな、という気持ちがあって。

それで、既製品を選ぶことから、自分たちで少なくとも編集する、もしくは最初からデザインするっていうのに徐々に切り替えてきました。

ただ、海外の家具を日本でも取り入れてもらう際に、「単純にこれがあったら売れる、じゃあ入れる?」ということではダメだと思っています。場合によっては、「これはたぶん売れないだろうけど、すごく気に入ってるからやってみよう。新しい価値観を提供できるかもしれない。」みたいに決めることもあります。

総じて、海外の家具をもっと日本でも楽しんでもらえるようにしたいですね。

 

ロビンさんから見る日本の家具市場

デザインに対する日本と海外の価値観の違い

村野:なるほど。海外との違いの話に戻りますが、大きさ、規格以外にも、デザイン面でも日本人の受け取り方は違ったりするんですか?

ロビン:デザインの面で、日本人だけじゃなくアジア全体がそうなんですが、実用性をかなり求めますよね。多くの人が優先順位として、実用性がトップにきます。

例えばソファのカバーリング。

布のソファだったら、カバーを外して洗えるようにしないと売りにくいという常識があるんですね。日本だけでなくて、韓国や中国、ベトナム、シンガポールどこに行ってもそうです。

でも、他のマーケット、オーストラリアやアメリカにいくと、そういうこだわりはなありません。むしろ、外せないFixedの方が人気なんですよね。

取れないほうが扱いやすい、という扱いやすさの捉え方の違いもあるのですが、やっぱりFixedの方がかっこいいものが多いんですよね。Fixedだと、曲線部分の張り感などをシワなく美しく表現できるのですが、カバーリングだとどうしても隙間が生まれるなどのムラができてしまいます。

これはデザインに大きな影響があるんですよね。だから、カバーリングがマストだと、本当にやりたいデザインができなくなってしまうこともあります。

ただ、カバーリングに適用するデザインだけになってしまうと面白くないので、Fixedの商品も多く作っています。最初は抵抗がある方もいたかもしれませんが、今は慣れて愛用していただいている方がたくさんいます。少しずつ、張り込み式でも売れる商品も増えてきました。

張り込み式のソファ PENSIVE

村野:日本人の感覚でも、その違いが分かると買ってくれるわけですね。

ロビン:はい。座り心地なども含めて体験が大きく変わるのですが、それをちゃんと伝えると理解してもらえます。こうしたデザインの力は、家具を買おうとしている人に伝えていかないといけないことだな、と思います。

また、大きさの話も絡みますが、大きいサイズの家具デザインをそのまま日本のサイズに合わせてもうまくいかないんですよね。

村野:海外から小さくリサイズして持ってきたけど、あまりオシャレじゃなくなってしまった、というケースもよく聞きますよね。

ロビン:ありますね(笑)。それも日本特有の制限ですね。大きくしてダサくなることはあまりないのですが、小さくしてうまくいかないケースは多いです。

こうした違いがあるので、海外の方がもっと冒険的で自由が効くけど、日本だと少し制約がある部分もあるかもしれません。ただ、そうした制約がある中でも、気に入っていただける商品を提供できたときはやっぱり嬉しいですね。

インテリアトレンドの変化が少ない日本

村野:ちなみに、家具先進国とも言える、ヨーロッパにルーツを持つロビンさんから見て、日本のインテリア市場・業界ってどのように見えているんですか?

ロビン:日本の家具の市場はトレンド変わるのが遅い、よく言えば安定していますよね。そんなに常に新しいものを求めているような感じはしないですよね。

海外のほうが商品ライフサイクルの回転は早いですね。家具ってファッションと違って、季節性があるものばかりではないと思いますが、新作を出すプレッシャーがブランドに対してあります。

日本はファッションに対してはトップレベルの欲がありますが、家具に対しての欲が比較的弱いですよね。家具のトレンドに興味のある人、気がいく人自体が少なく、すごく少ないんですよね。

だから、そのニッチな層を獲得したいメーカー以外は、いつも新しいものを作ることはしいないですよね。新色、素材を出さなくても、よく売れてるものをずっと作り続けていますというメーカーが多いですよね。

村野:確かに。
ミラノ・サローネを見ていても、3年同じようなトレンドが続くことは多くないですよね。
1年変化が小さい年があっても、昨年変化が少なかったから、というので、翌年は大きな仕掛けがあったりします。そういうのが日本はないかもしれないですね。

日本の家具市場に対してのアプローチ

世界中の家具を見て得た知見で日本に変化を

ロビン:もちろん悪い側面だけではないですが、動向に対しての興味が弱いというのは残念ですよね。

反対に、その業界に対して変化を与えるのが、moda en casaの仕事・役目だと思っています。なかなか変わらない日本の家具市場に、変化を持ってくる。そういう意識でやっていますね。

村野:そのために、海外トレンドを日本の事情に合わせられるオリジナルに力を入れている、ということですよね。

ロビン:そうですね。

あと、新しい海外ブランドを取り扱うというのは、相当負担が大きいことでもあります。

それでも、海外でみた素材やデザインをmoda en casaなりにオリジナルの製作に活かして、シリーズでなく単品から作り始めてみる。人気が出たら生産強化すればいいですし、売れなければ取り下げて次の商品の開発に活かす方がいいですよね。

また、色々なデザイナーと協力して、日本だけでなく27カ国に輸出してるので、その海外の取引先とのやり取りもトレンドリサーチになっています。

海外にこういう構造や機能の商品がある、といった情報が刺激やヒントになります。じゃあmoda en casaオリジナルでこの素材を取り入れてみようか、こういう色を組み合わせたら面白いんじゃないか、という風にアイディアが出てくるんですよね。

デザイン家具に興味があるが、買えない方も手が届く価格帯に挑戦

村野:そうしてアイディアが形になり、moda en casaさんからは常に新しいよいデザインの家具が出ていますよね。

それでいて、価格が抑えめの印象があります。良い意味でデザインと価格が合っていないような(笑)。デザインがよいのに、価格見てみると想像よりもはるかに安い印象を受けます。

ロビン:そういっていただけると、私たちの狙っているポジションなので嬉しいですね。

クオリティとデザイン性が高いだけでなく、価格がお客様のニーズに合っているかというのは、企業として努力しています。当たり前ですが、見合わないとうまくいかないので。

でも、3つ同時実現させるのは結構大変です。ボーコンセプトも初めの頃は、今より全然安くて、リーズナブルだったんです。オープンしたときに、お客様から「え、なんでこんなに安いの?」と言われるくらいでしたね。当時はミドルくらいの価格で、品質はまあ十分、デザインも良い、というのがあまりなかったんですよね。そのため、すぐに注目が集まりました。そのあとは、価格がどんどん上がってしまったんですけどね。

私としては、そうした品質に対してのプライシングの信用を失うと、買った人の満足感が大きく下がると感じています。そして、売り手としては売りにくくなる感覚があります。

そうした経験もしているので、ただ価格が安く抑えるというよりも、妥当な価格を実現するための努力は怠らないようにしていますね。

その影響かもしれませんが、今もヨーロッパにいいものがあれば輸入の検討はするんですけど、輸入したときの想定価格が見合わないんですよね。moda en casaオリジナルの商品に負けてしまいます(笑)。

そんな風に、moda en casaの場合は、決して安いとは言えないかもしれませんが、家具、デザイン家具に興味がある人なら手が届く、そういうデザインや品質、価格を目指しています。

珍しい素材も幅広く取り扱うことで商品も特徴を掴んでもらう

村野:ちなみに、特に人気が強い商品はどのあたりになるのでしょうか?

ロビン:攻めたデザインのものでいうと、こちらの「フライングテーブル」ですね。コンクリート、ガラス製で直線だけで構成された四角いローテーブル。かなり尖ったデザインですが、moda en casaの代表的な商品になっていますね。

moda en casa FLYING TABLE

他には、このテラゾー。新しい素材として取り入れましたが、もう2,3年目になりますね。他のブランドでも、最近は少しずつ新しい素材やデザインも出てきていますよね。でも、このテラゾーは、ほとんどどこにも出ていないんですよ。

moda en casa テラゾー素材のサイドテーブル

村野:本当に様々な素材を使われていますよね。

製品ラインナップの幅広さを意識していることが要因だと思います。

感覚的なものなのですが、新しい素材を持ってきて、それが昔からある素材に上手く馴染み、MIXされたりしたときの気持ち良さ。14年くらい前にコンクリート素材を持ってきて、「インテリアには合わない」と言われながらも、上手く全体として馴染んで、昔からある家具にも新鮮さが生まれる。そういうサプライズも大切だと思うんです。

あとは、そうした幅広さがショールームにあることで、一つひとつの商品の違い・特徴がはっきりします。これも商品選びにおいては大事なことですよね。類似した商品ばかり置いていると、そのカテゴリの中での違いにのみ目が行ってしまいますが、インテリア作りにおいては全体像を見失ってはいけないと思うんですよね。

村野:いわゆる「木を見て、森を見ず」という状態ですね。一つひとつの商品の細かい違いを気にして、全体で調和が取れないというのは、インテリアコーディネートの失敗としてはあるあるです(笑)。

ロビン:そうですよね(笑)。

また、特に素材に関しては、家具の基本は木製だと思いますが、木製の家具を得意としている日本のメーカーさんはたくさんいます。そことディティールで競争しても仕方ないので、私たちは他のメーカーが扱っていない素材を扱うようにしています。

今でいうと、木製の家具が半分ないかもしれないですね。このバリエーションもmoda en casaの強みの一つです。新しい選択肢を提供して、より一つひとつの家具に気がついてもらいたい、という想いもあります。

moda en casaの今後の展望

お客様にとって気づきになるものを提供していく

村野:moda en casaさんの今後の取り組みや、今後5年10年の展望をお伺いしてもよろしいでしょうか?

ロビン:前半に話したことと被ってしまうかもしれないんですが、「見たことない」「これ新しいね」のように、新しい発見を提供して気に入ってもらえることが多いので、もっと新しい発見を増やしていきたいですね。

正直売れるか全然分からないけど、やってみなければ分からないし、おもしろくて話題になれば・・・という気持ちで出した商品の方が上手くいくことが最近は多いです。

村野:これも具体的な商品あったりしますか?

ロビン:例えば、「GRECO(グレコ)」というピンクのベルベットのソファですね。

GRECO

グレコを導入する前は、まさか日本でピンクベルベットのソファが売れるということは、みなさん全然頭になかったと思います。

取り扱うことになったのはスタッフのおかげなのですが、当時、海外の取引先の間でピンクベルベット、あのデザインが流行っていました。それを見て「すごく可愛いし、かっこいいんだけど、moda en casaではなあ、日本ではどうだろうなあ・・・。」と言って、無難なダークグリーンを選んだんですね。

そしたら、スタッフのみんなが「いや、そんなことないよ、意外にいけるかもしれない。」と言ってくれて。「じゃあやってみようか。」と扱ってみることにしました。

いざ出してみると、彼らが言ったことが合っていて、特に女性の方が「なかなか見ないから。」と喜んで買ってくださいました。

今思うと全然リスキーでもないことなんですけど、当時はなかったものにチャレンジして、お客様に発見を届けられた例ですね。

そういう他のメーカーさんがやろうとしないとか、あまりやりたくない苦手なものにも挑戦してみて、ニッチにはなるけど、お客様にとって発見になるものを作っていけたらと思います。それがこれからのミッションですね。

村野:moda en casaさんらしさ、というのも、常に変わっていくかと思いますが、引き続き日本に新しい風を吹かせるような商品を楽しみにしています!

本日はありがとうございました!

最後に

日本市場に変化や発見を与えたいという想いが伝わってきました。また、高いデザイン性と低価格を実現している理由についても、お分かりいただけたのではないでしょうか。

ロビンさんもおっしゃっていた通り、幅広い商品から比較することで、商品の魅力が見えてくることもあります。ぜひショールームに足を運んでみてください。

また、Hello Interiorではmoda en casaさんのアイテムをコーディネートする際のアドバイスもさせていただいております。ご興味をお持ちいただいた方は、ぜひお問い合わせくださいませ。

moda en casa様 ショールーム情報

ショールーム:
東京都品川区西五反田7-22-17 TOCビル 4F
福岡県大川市大字大橋266 協同組合インテリアポート エルバーレ
サイト :https://modaencasa.jp/shop

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