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【国内の木製家具生産を牽引するカリモク家具】創業から受け継がれるその思想に迫ります!

Hello Interiorではインテリアブランドの方を取材し、そのブランドにかける想いやおすすめの商品を取り上げさせていただいています。

今回は、カリモク家具様です。カリモク家具様は、木製家具国内生産トップを誇る安心の家具メーカーです。 新市場営業部部長 花井さんに、Hello Interiorのチーフコーディネーターの村野がお話を伺いました。

花井さんは家具・インテリアについての知識が豊富で、編集部の個人的な感想で恐縮ですが非常に勉強になりました。カリモク家具の商品だけでなく、家具の選び方についてもご意見を伺いましたので、ぜひ参考にしてくださいませ。

カリモクの成り立ち

愛知県刈谷の木工所がカリモクの発端

村野:まず、カリモクさんの創業背景や歴史について教えていただけますか?

花井:もともとカリモク家具は、愛知県の刈谷市というところで木工業からスタートしています。

江戸時代から続く材木屋として生まれた 加藤正平が独立して、一つの木工所を作ったところからスタートしたそうです。その中でいろんな木工に関する仕事をしていたときに、高度経済成長期に入った日本の背景の中で、家具の事業をやろうと起業したのが、カリモク家具の発端なんですね。

とはいえ、家具についてはノウハウも何もないところからのスタートでした。当時、地元のトヨタミシンの輸出用木箱やミシン台の部品製造を受けたり、下請けとしてピアノの鍵盤を作ったりさせてもらっていました。

そこでミクロの単位の仕事で精度高く木工する技術を培うことができた。そういう背景があって、この技術を活かして、木製家具を通じて広く人間生活の向上に貢献したいという思いで家具作りを始めました。

村野:最初から家具屋、あるいは商社からの転身は多いですが、他の木工業からの転身はあまり聞かないですね。

花井:そうですよね。

今も受け継がれるアフターフォロー重視の風土

花井:当然、当時はまだ何もノウハウがなかったので、小さい家具から作り始めました。

作り始めた時のエピソードで、今も残っている創業者の言葉として、「家具作りを始めたはいいけど、えらい事業を始めてしまったなぁ・・・」という言葉が残っています。

なぜかというと、アフターフォローが付き物の事業なんですよね。家具作りを始めて売れてよかったよ大成功!ではなく、後々までお客様の面倒を見ないといけない事業で、売りっぱなしで行かないということに創業後に気付き、このような言葉が残っているそうです。

村野:今でも、カリモク家具のアフターフォローはかなり手厚いので、創業者の加藤さんも相当大事にされていたんでしょうね。

花井:アフターフォローについては、今も口酸っぱく言われているので、完全に会社の文化ですよね。

ショールーム展開をすることでフォロー体制も強化

花井:こうしてマガジンラックなどの小さいものを作って、東と西に分かれて、風呂敷に包んで電車に乗り、家具屋さんを行商に回ったのが当初の家具の卸事業です。日本の国内には、先発の企業がいろんな良い家具をお持ちだったので、弊社は後発企業として追いつけ追い越せの理念で、事業展開をしてきたのが、カリモクのスタートです。

そこから、家具専門店さんを中心に商いを広げながら、1986年にはショールームの第1号が建てられました。3000坪のショールームというのは、当時のメーカーとしてはとてつもない規模でしたね。

お客様が体感できる場所を提供していきたいという理念の下で始まったショールーム展開も、ここから30年を超えて、ようやく全国で同じような施設を約26カ所に展開できたというのが、会社の大まかな沿革です。

家具メーカーの展開としては非常に珍しい展開ができたのではないかな、と。また、それで他のメーカーさんとの差別化ができたと思いますね。

村野:メーカーさんでこれだけの規模のショールーム持っているところってないですもんね。

花井:おかげで、弊社が残れていると思います。

というのも、かなりの数があった家具屋さんもどんどん衰退してしまったんです。婚礼という日本の文化が、大きく様変わりしたことに起因するのですが、小売店・メーカー共に、以前の仕組みに依存しているところがあったんです。結婚と合わせてタンスを買うような箱物家具の文化に乗っかって、商売をしていたんですね。

一方で、弊社は足物家具を起源にスタートしたので、そこに依存していなかったんです。それに加えて、ショールーム展開にいち早く着手できた。この2点が大きかったと思います。

もう一つは加藤正平の言葉から生まれた文化ではないですが、カリモク家具は売りっぱなしじゃない、というお客様の信頼感を獲得できている家具屋は少ないんじゃないかと思います。

今でも、このアフターフォローがなくなると、カリモクの存続価値はなくなるぞ、とよく相談役が申しています。確かにこの修理を含めたアフターフォローで世の中の皆さんにとって、必要なメーカーであれているのかなと思うところがありますね。

村野:家具の量販が生まれて、壊れたら使い捨てのような風潮も生まれてきていますが、充実したアフターフォローからブレないのがすごいですよね。

カリモクの特徴

商品の設計から修理・メンテナンスできることを前提に作る

花井:企画の人間も含めて、実際にものを作るところだけでなく、商品を開発する段階から修理ができることを条件にしているくらいアフターフォローを徹底しています。

例えば、シートが簡単に外せる、アームや足をすぐに取り替えることができる、といったことを念頭に考えてから、商品の設計に入ります。デザインも含めて一つの制限を加えることになっても、売りっぱなしにだけはしちゃいけないという考えです。

30年40年使われたお客様から、「これカリモクの商品だから、修理してくれ」と言われた時に、分かりましたと受けることができる商品作りをすることは、変わらず引き継がれている想いですね。

村野:実際にカリモクの社員の方が現場に行くこともあるんですか?

花井:もちろん行きます。商品管理部にメンテナンスグループと言う部署があり 愛知県の工場を筆頭に現在では全国24か所の営業所に現地でできる修理をする技術者がいます。そこには簡易な修理ができる設備が整えられています。

でも、例えば大型の天板の吹き付けの再塗装やソファの張り替えとなると、なかなか現場や営業所ではやり切れないこともあります。昔の商品は、型紙が残っていないこともありますからね。そうなると、全てばらした上で、張ってあった生地から型紙を再度作って…ということを考えると、現地や営業所では難しいところがあります。

そのため、大型のものは本社工場に戻してもらっていますね。それ以外の細かい修理、簡単な塗装や締め付け直しは現地で対応すると。

一つひとつ丁寧に対応するため、時には修理費が高額になることも

村野:職人さんがお客様宅で行うこともあるんですね。
結構値段も張りそうな気がします。

花井:それが理解いただけていればいいんですけどね。

なかなか一般のお客様には理解いただけないのが、修理技術料や出張費のような料金です。ソファだと20万、30万が張り替え修理でかかることもあるんです。新しい商品と同等もしくは当時ご購入いただいた金額よりも高くなることもあります。

金額だけ聞くと高い気がしますが、修理の工程を考えると高すぎる値段ではないです。修理には新しい商品を作る以上に手間と時間がかかる場合があります。一つの製品としての組み立てはもちろん、一度中のウレタンや木製フレームの取り替えなども行ったりするわけですから、30万円となってもむしろ安い方なんですよね。

職人さんが作業する現場を見ていると、その作業内容はとても根気の要る内容となっており、我々から見ると その技術力の高さに加え家具が蘇ってきたときの佇まいを見ると とても頭が下がる思いになります。

また一言で修理と言っても、実際にはお客様宅からの引き取りから始まり⇒梱包⇒物流⇒工場着⇒
商品の解体⇒実際の修理⇒養生⇒梱包⇒物流⇒お客様の御部屋へのお戻しまで、相当な手間とコスト時間を
要することになります。

でもそういった絵が見えないお客様にとっては、やっぱりなんでそんなにお金がかかるのか、分からない。その説明からさせていただくようにしていますね。

村野:そうですよね。

商品自体の絶対寿命だけでなく、納得のいく選択で感覚寿命を伸ばす

花井:一方、お客様からすると家具の寿命が気になりますよね。そうなると、家具って何年ぐらい保ちますか?とよく聞かれます。この寿命の考え方が少し難しいと思っていまして。

家具の場合って、電化製品と違って、絶対寿命と感覚寿命があると思うんですよ。絶対寿命は素材が壊れちゃう、破れちゃうまでの年数。これは家具の絶対的な寿命ですよね。

対して感覚寿命は、お客様が気に入っていられるか年数です。選ぶ時に妥協・我慢しているものについては、少し傷入っただけでもう使えないんです、と嫌になってしまい、買い換えるタイミングの理由にするんですね。これが感覚寿命です。気に入ったものを買っていないと、早い人で1~3年ぐらいで感覚寿命が来てしまいますよね。

村野:なるほど。それくらいで買い換えたいと相談に来たお客様も多い気がします。

花井:一方で、弊社が修理を承るお客様は、もう25年30年以上経ってるお客様が大多数です。「もうお客様勘弁してください、もう元取ってますよね。」と言いたくなるくらいです。

でも、そのお客様からすると、サイズ的にもデザイン的にももう家にはまりすぎて、他の物を考えられないんですよ。ずっと旦那さんと一緒に暮らしていて、その旦那さんが亡くなったけど、その思い出も入ってるとか、おじいちゃんおばあちゃん、家族と共に過ごした思い出もあるから、買い換えることなんて考えられないと。

そういう愛情を持っているお客様からすると、クタクタになったソファも、まだ使えるという感覚なんです。さっきの料金的なことを理解して修理されるのは、そういう大事に使ってくださっているお客様が大多数ですね。

カリモクが重点的に取り組んでいること

サスティナブルな社会に繋がる、大切にしてもらえる家具作り

村野:創業から脈々と受け継がれている文化・仕組みについてお伺いしましたが、今重点的に取り組んでいることはありますか?

花井:今世界的にみても、サスティナブルな社会作り、継続可能な発展を目標とする動きが強いですよね。日本人ももっと意識しなきゃいけない時代になってきていますが、弊社の国内生産と家具づくりに対する考え方は、サスティナブルな社会作りと親和性が高いと思い、より一層強化しています。

ちょっとした豆知識なのですが、先進国における国土面積に対する森林面積比率の日本の順位は分かりますか?

答えは、先進国の30数ヶ国の中で2位です。余談ですが、日本の47都道府県の中で森林面積比率1位は高知ですね。平地面積がほとんどないです。桂浜から市内を通り抜けると、すぐに山があり、圧倒的に森林が多いです。ぜひ覚えておいてくださいね(笑)。

何かを得るために何かを捨てるのではなく、全て揃った一級品を作る

花井:こうした世界の動きも踏まえて、今後も修理・メンテナンスの領域には注力して取り組んでいきます。

やっぱり木製家具を通じて、生活を豊かにしていきたいというのが根幹にあります。木に対する造形美や癒しを、感じれる国民性だと思っているので、まだまだ弊社にやれるチャンスがあると思っています。提案できる余地が残されているなと。

海外の高級テーブルを見ると、そのほとんどが突板仕上げです。これは、同じく造形美の観点で考えると、ヨーロッパの人たちは突き板だからできる加工に造形美を見出しているんです。それを踏襲して、「木目が綺麗」と言うキーワードで日本の方も物を選ばれていますが、この辺りの知識や認識が日本人は遅れてるように感じます。

そういう方たちにも納得して選んでもらえる家具作りを弊社はしたいですね。

村野:使いやすく便利にするって重要ですよね。最近流行っているミニマリズムの中でも、用途にあった機能はやっぱり失われてはいけないと思いますし。

花井:そうですね。これからは超高齢化社会じゃないですか。そのため、弊社が真っ先に取り組んだのが、椅子を軽く作ることです。カリモクの椅子は圧倒的に軽いですよ。

何のためにやっているかというと、みんな重たいのを嫌がるからです。弊社のチャレンジは座り心地は当然よく、その上で軽くて耐久性も高い、難易度の高い課題をもって仕事をしています。

村野:重いからいい、という概念があるじゃないですか。その概念を壊していくのは大変ですよね。

花井:重装備になれば、耐久性は上がるのですが、使いにくいからキャスターをつけてくれ、という要望が増えるんですよね。

次第に、多くのメーカーさんがキャスターをつけていくわけですが、重たい椅子にキャスターをつけたら、床が傷ついてしまいますよね。キャスター移動中に引っかかって転んでしまうこともあるわけです。

そういうことを避けるために、カリモクはキャスターをなるべくつけませんでした。弊社で徹底的にやったのは、椅子の構造を根本から見直すことでした。

その上で、座り心地は捨ててはいけないということで、弊社が進めている座り心地研究をいち早くダイニングチェアにも取り入れました。転ばないし、長時間座っていても疲れないし、腰に優しい椅子、ということを徹底的にやりつつ、耐久性は高める。全く違うテーマを全部盛り込んで作っています。

カリモクを象徴する商品

テーブルの上に引っ掛けて収納できるダイニングチェア

花井:実際の商品をいくつか見てみましょうか。この椅子も私たちの考えに触れていただけると思います。

村野:まず、すごく軽いですね。

花井:軽いですよね。
そして、この椅子は肘を引いて楽な姿勢も取れるし、足を広げても全然邪魔にならず、体格の良い男性でも楽に座れます。

でも、背もたれと肘が一体になっている形状の椅子だと、テーブルの下に椅子が収まらなくて、かなり場所を取ってしまいますよね。だからこの椅子はもう一工夫加えています。

この肘掛けの部分がテーブルに乗せられるようになっているんですね。これによって、人が座っていない時に省スペース化することができます。マンションや狭小スペースのダイニングルームでは、多くの場合、部屋の形状が細長い長方形なんですよね。だから、少しでも通路のスペースを作りたい。そういう悩みと願望を叶えました。

医療にも使われる、”疲れない”パーソナルチェア

村野:他にもカリモクの特徴が出ている、代表的な商品を教えていただけますか?

花井:こちらのパーソナルチェア「THE FIRST(ザ・ファースト)」ですね。サイズが大事だとお伝えしたように、この椅子の場合、S, S+,M,Lの4サイズがあります。

日本人の平均的な体型の男性だと、 Mがフィットしやすいです。体格がいい、もしくはゆったり座りたい人はLを選んでもらえればと思いますが、MとLは多くの女性には合いません。

そもそも、体型だけでなく体のラインも違うからです。それでSサイズも作ったのですが、最近は身長の高い女性も増えているということで、S+を追加して、より多くの人にフィットするようにしました。

村野:これ、すごく馴染みますね。全然疲れない。

花井:途中で気付かれたかもしれませんが、首が固定されていたところから、フリーになるタイミングがありましたよね。途中までは首に支えがあった方がいいのですが、ある程度のところまで行くといらなくなります。そこで外れるようになっています。 そのときの体調や用途によって、求めたい角度は変わります。それを自重で好みの位置に調整できるのがこのチェアの魅力です。

また、なぜ疲れないかというと、多くのリクライニングチェアは、リクライニングする際に、腰が座面からも背もたれからも離れてしまうんです。

でも、このチェアの場合は離れません。背もたれが下に滑り込みながらリフトアップするので、隙間が生まれないんですね。結果、自分の体重が均等に分散してくれるので、疲労が溜まりづらくなっています。

村野:確かにこの椅子は驚くほど楽ですね。

花井:これが違うサイズになると、曲げたいところと違う場所を曲げられるんです。首元のサポートも高さが合いません。

ショールームに来ていただければ、自分のサイズに合った椅子選びとは何か、が分かる椅子になっていると思います。

感覚寿命を伸ばすポイントは、自分のサイズに合った家具を探すこと

村野:ちなみに、花井さんの考える、いい家具の見分け方ってありますか?

花井:私の考えでいうと、自分の体のサイズに合ってるかどうかだけだと思います。後は手触り、材料、素材などありますが、どんなに安くても自分の体のサイズに合っていれば、第一関門は突破です。素材がどうとかは、その後だと思います。

どんなに高級な椅子でも、自分のサイズに合っていない椅子は居心地が悪くなってしまって、感覚寿命が短くなりますね。

村野:参考になります。

花井:実は、本当は形以外そんなに重要視していないというお客様も多いと思うんですよね。でも、一般的にはカラーリングや材料についての選び方が多く広まっているから、そっちを重視せざるをえない。

そうじゃなくて、実際に座ってみて自分に合うサイズかどうかを確かめるのが大切だと思います。

村野:そう考えた時に、ショールームが近くにあるかないかは重要ですよね、やはり。

カリモクが家具に懸ける想い

村野:最後に、カリモクさんの家具にかける想いと今後の抱負を語ってもらってもよろしいでしょうか?

花井:今までと変わることなく、お客様それぞれにとって大事な家財となるものづくりをすることが大切だと思っています。

同時に、日本の文化・価値観の見出し方は変えていかなくてはならないと思っています。よりサステナブルな社会に動こうとする社会の中で、今の使い捨ての考え方はマッチしません。

カリモク家具はメーカーの使命として、日本の文化が廃れないように徹底し続けなきゃいけないと考えております。だからこそ、カリモクは海外生産をやりません。安売りも低価格帯商品と言われるものもやりません。それはどこかで、先に挙げたようなポイントのどこかで手を抜ことを、絶対にやってはいけないと考えているからです。

何より、弊社のオーナーの絶対に外したくないところ、メンテナンス。どんなにお客様がそれを望まれたとしても、それをやってしまうなら、この市場に存続する意義がないと思います。

少なくとも、まだこうしたカリモクの商品・姿勢を支持いただいている方がたくさんいらっしゃる。そこに誇りを持って、商品づくりを続けていきたいですね。

最後に

創業の想いが現在まで受け継がれていて、今もメンテナンスができる家具を生産し続けていることに、安心安全の木製家具の国内生産を牽引する強さを感じますね。

Hello Interiorではカリモク家具さんのアイテムをコーディネートする際のアドバイスもさせていただいております。ご興味をお持ちいただいた方は、ぜひお問い合わせくださいませ。

カリモク家具様 ショールーム情報

ショールーム一覧:
https://www.karimoku.co.jp/index.cgi?mode=shop_check
コーポレートサイト :
https://www.karimoku.co.jp/

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