Richard Ginori(リチャード ジノリ) の人気の秘密を探る。300年近い歴史のある陶磁器ブランドはモダンスタイルにもマッチ
17世紀、ヨーロッパの王侯貴族の間で「白い金(ホワイトゴールド)」と呼ばれ、こぞって求められた高価な品があります。それは、中国の景徳鎮や日本の伊万里といった、アジアからもたらされた磁器のことでした。ヨーロッパでは、この東方の美しい磁器を王侯貴族たちが大金を払って買い集めていたといいます。18世紀、ドイツのマイセンで磁器の製造に成功すると、その後に続くようにヨーロッパ諸国の国々でも磁器の開発が行われました。
2020年にブランド名を「GINORI1735」へと変更した「リチャードジノリ」は、そういった18世紀のヨーロッパの磁器製造競争において、トスカーナ大公国(現イタリア)で1735年に開窯した陶磁器ブランドの老舗の一つです。今回は、そんなジノリの魅力と特徴を探っていきたいと思いますので、イタリアの食器がお好きな方や、白い食器がお好きな方など、ぜひテーブルウェア選びの参考にしてみてください。
目次
リチャード ジノリ が何故支持されるのか?インテリアのプロがその人気の秘密を紐解く
リチャード ジノリとは?
1735年、トスカーナ大公国(現在のイタリア・トスカーナ州)に開窯したドッチァ窯は、トスカーナの貴族「カルロ・ジノリ侯爵」によって設立されました。当時のトスカーナ大公国は財政難に苦しんでいたため、ジノリ侯爵は白い金と呼ばれた磁器の生産を行うことで、その難を切り抜けようと考えました。鉱物学に詳しかったジノリ侯爵は、職人たちと共に磁器の原料となる土を探し、発色の研究などを行い、ついに白い磁器の製造に成功します。
初代侯爵が若くして亡くなると、息子であるロレンツォ・ジノリ侯爵が、後を引き継ぎます。彼は新工場の設立の他、磁器の原料の土の改善を行い、より美しく白い磁器の製造に成功します。そんな彼の時代には、ジノリの人気シリーズ「イタリアンフルーツ」などのパターンも誕生しました。三代目に経営が引き継がれた18世紀末から19世紀初頭になると、磁器は貴族だけではなく、庶民にも手に入れることができるようになります。ジノリの初の直営店がフィレンツェに誕生したのは1801年のことでした。この時代になると華やかで曲線的なロココ様式から、直線的なネオクラシック様式へと移り変わり、家具だけではなく食器にもネオクラシックらしい直線的な表現を取り入れた「インペロシェイプ」が生み出されます。
五代目ジノリ侯爵に至るまでに、さらに工場を大きく、設備を発展させていったジノリは、四代目の頃にはイタリアを代表する陶磁器会社としてロンドン万博にも出展を果たしました。しかし、そんなジノリでしたが、五代目カルロ・ベネデット・ジノリ侯爵時代、その経営はそれまでのジノリ家から離れ、ミラノの起業家であった「アウグスト・リチャード」に託されます。リチャード氏の経営していたリチャード陶磁器会社とジノリが合併したことにより、みなさんも馴染み深いブランド名「リチャードジノリ」となります。
ロココの時代に生まれたジノリは、その後ネオクラシック、アールヌーボー、アールデコ、モダンと時代の流れと共にデザインを取り入れながら、イタリアで磁器を作り続けました。2013年にはグッチの傘下に加わり、ジノリは現在もイタリアを代表する陶磁器ブランドとして、多くの人々に愛され続けています。日本では全国の百貨店やネットショップから購入することができるので比較的に手に入れやすく、また高級感のあるデザインと、少しお高めですが手に入れやすい価格であるため、多くの日本人ユーザーにも愛されるブランドの一つとなっています。
参考:GINORI1735 HP「history」
https://www.ginori1735.com/jp/ja/history
参考:GINORI 1735 HP「HISTORY & MUSEUM」
https://richardginori.co.jp/history/
リチャード ジノリのスタイル
ジノリは、時代と共に様々な様式を取り入れたデザインを生み出してきました。初代の時代に生まれた白い磁器シリーズ「ベッキオホワイト」や、大公妃のためにデザインされた「グランデューカ」。二代目の時代に誕生した「イタリアンフルーツ」などは、現在もジノリの人気シリーズです。
ベッキオホワイトシリーズは、「ベッキオジノリシェイプ」と呼ばれる荘厳なバロック様式のシェイプ(形状)をしており、イタリア語で「古い」を意味するベッキオの通り、ジノリが18世紀の頃から作ってきたシェイプの一つです。また、グランデューカやイタリアンフルーツシリーズは、「アンティコシェイプ」と呼ばれるドッチァ窯の創世記から作られてきた伝統的なシェイプをしており、柔らかくエレガントな曲線表現がロココ様式を思わせます。この二つのシェイプは、クラシックテイストやカントリーテイスト、ナチュラルテイストなど、曲線的で柔らかな印象や、伝統的でノーブルな印象のインテリアにマッチします。
社名がリチャードジノリになった以降の1920年代から30年代の頃、ジノリのアートディレクターとして活躍した、イタリアの建築の父ともの言われる「ジオ・ポンティ」のデザインしたシリーズも忘れてはいけません。「ラビリント」「カテーネ」などのシリーズは、実にイタリアンモダンらしい洗練されたデザインのシリーズとなっており、モダンスタイルの洗練されたインテリアに取り入れたくなります。
そんなジオ・ポンティの手がけたシリーズや、「コンテッサ」などのシリーズに採用されているは、ネオクラシック様式の時代に誕生した「インペロシェイプ」になります。シンプルでスッキリとしたラインは、モダンスタイルのインテリアやアーバンスタイルなどにもおすすめのシャイプとなっています。
リチャード ジノリの評判
ジノリのアイテムは、美しい磁器の肌を持ち、イタリアらしいクラシックデザインとモダンデザインの「伝統」と「革新」の2つのデザインスタイルを時代に合わせて取り入れてきました。ここでは、日本のユーザーに特に人気が高い「ベッキオホワイト」シリーズ(下画像)について、その使い心地や魅力を実際に使用している方の声を参考に見ていきましょう。
今まで使っていた食器の価格を考えると
ジノリはちょっと高いので悩みましたが
これから長く使うことを考えて決断しましたベッキオは
クリアな白と上品なレリーフが美しく、
日常使いからおもてなしまで対応できます。金彩がないので電子レンジも使えますし、
絵柄がないので色あせの心配もありません。
ベッキオホワイトはホントたくさんの方が使用されていますよね~
レストランなんかでもよく使っているのを見かけますが
私も日常使いだけでなくおもてなしも使う予定です★こちらのお皿はより美味しそうに見せてくれます☆
私は手を抜いた料理は特にこのお皿を使ったりします(笑)
また食洗機もレンジもOK 割ってしまってもジノリの定番シリーズなので
後から追加できるのもうれしいです♪
ベッキオホワイトシリーズは、バロック様式の荘厳なレリーフが特徴的な真っ白な食器のシリーズです。ジノリの定番の人気のシリーズで、種類が豊富なのも魅力の一つです。日本の食卓でも使いやすい小皿や、鉢、角皿などバリエーションが多く、白皿ながら装飾的なレリーフが施されているのでおもてなしの食事の場にも使用することができます。ジノリの特徴とも言える美しい白磁は、料理が美味しそうに見ると多くのユーザーが評価しており、白皿をお探しの方にもおすすめです。
リチャード ジノリ が好きな方におすすめブランド
MEISSEN(マイセン)
ドイツの「マイセン」は、1710年にヨーロッパで初めて磁器の製造に成功した硬質磁器窯です。現在でも、ドイツを代表する陶磁器ブランドとして、確固たる地位を持つ老舗として知られています。自社が所有する鉱山から採掘したカリオンで作る、美しい白色の磁器肌が特徴的なテーブルウェアと、繊細で愛らしい磁器で作られた「マイセン人形」などのアイテムを取り扱っています。価格帯はジノリよりもややお高めですが、職人の手による高いクオリティーは、多くのファンに支持されています。
波のようなレリーフが特徴の白色の食器「波の戯れ」シリーズや、藍色の染付による「ブルーオニオン」シリーズなどが人気です。マイセンのアイテムは、美しい白磁を生かした肌と、クラシックで個性的なシェイプが特徴的で、白皿好きな方はジノリと合わせて見ておきたいところ。原料にもこだわり、職人たちの手によって丁寧に作られるマイセンの食器は、芸術的な価値もあり、ぜひ手に取ってその魅力を感じてみてはいかがでしょう。
参考:マイセン HP
https://www.meissen-jp.com/
Herend(ヘレンド)
「ヘレンド」は、1826年にハンガリーのヘレンド村で開窯したハンガリー初の磁器工房からはじまったブランドです。王室や皇室御用達の陶磁器ブランドとして、ヴィクトリア女王やナポレオンの妻ウージェニー皇妃、オーストリアのエリザベート皇妃など、多くの高貴な女性たちに愛されてきました。華麗でいて上品かつ、柔らかく愛らしいデザインのアイテムシリーズを多く扱っており、食器類の他、インテリア小物や磁器人形なども製造しています。
ポター(陶工)やペインターなどの卓越した職人の手による繊細な造形や絵柄など華やかなアイテムが特徴的で、花や自然のモチーフが多く用いられた可憐なデザインが魅力です。シノワズリやジャポニスム流行の時代を生きたヘレンドも、ジノリやマイセン同様和食にも合わせやすいシリーズも扱っています。また、白皿のシリーズでは「バロックホワイト」シリーズが、荘厳なバロック様式のレリーフを用いた白皿シリーズとなっており、ベッキオホワイトのようなクラシックな白い食器がお好きな方におすすめです。
参考:ヘレンド ジャパン HP
https://herend.jp/
プロが選ぶ!リチャード ジノリ の代表的なおすすめアイテム5選
ジノリの人気シリーズ:ベッキオジノリホワイト シリーズ
ジノリのアイテムの中でも定番として、多くの人々に愛されているベッキオホワイトシリーズは、ホテルやレストランなどにも採用される人気の高いシリーズです。洋食・和食・中華と様々な料理を盛り付けても、美しい白色が料理の見た目を引き立ててくれます。
18世紀に誕生したベッキオジノリシェイプは、バロック様式のうねるような大胆な曲線を描くシェイプで、プレートのレリーフはもちろん、カップやポットなどの持ち手部分には、より顕著に曲線表現が見られます。シンプルな白い器でありながら、荘厳なレリーフが美しいベッキオホワイトは、単一での使用にはもちろん、他の柄入りの器の下に重ねて使用すると、テーブルウェア全体がワンランク上のおしゃれな雰囲気になります。クラシックなインテリアやラグジュアリーなスタイル、普段使いからフォーマルな場にもおすすめです。
参考:GINORI1735 HP「ベッキオジノリホワイト」
https://www.ginori1735.com/jp/ja/vecchio-ginori
ベッキオよりもシンプルな白シリーズ:アンティコホワイト シリーズ
ベッキオホワイトよりもレリーフやシェイプの曲線表現が控えめなアンティコホワイトシリーズは、名前の通りジノリの伝統的なシェイプ「アンティコシェイプ」の白い器のシリーズです。柔らかな曲線表現と、控えめなレリーフが特徴のクセの少ないシリーズで、グランデューカやイタリアンフルーツといった、ジノリの人気シリーズと同じシェイプのため、互換性が高く組み合わせしやすいシリーズです。
ベッキオほどレリーフの主張が少ないので、控えめなデザインがお好きな方におすすめです。カントリースタイルやナチュラルスタイルなど、優しいインテリアスタイルに合わせやすく、お好きなファブリックと組み合わせたりなどコーディネートを楽しむこともできます。
参考:GINORI1735 HP「アンティコホワイト」
https://www.ginori1735.com/jp/ja/antico-doccia
テーブルの上を爽やか印象に:イタリアンフルーツ シリーズ
ジノリで最も有名なパターンとして知られているイタリアンフルーツは、1770年頃に、とある貴族の別荘のテーブルセットのためにデザインされました。青紫のプラムや小さな花などが散りばめられたパターンは、爽やかでヘルシーな印象ながら、アンティコシェイプの緩やかな曲線と金の縁模様によって、上品な印象を与えます。
朝食やティータイムなどの爽やかな食事の席や、ディナーの後のデザートなどにもおすすめです。アンティークやクラシックなどのインテリアスタイルの他、カントリースタイルや爽やかなナチュラルスタイルなどにもマッチするシリーズです。ちなみに、ウェッジウッド社の「ワイルドストロベリー」と同様、フルーツをモチーフにした爽やかなシリーズですが、ワイルドストロベリーよりも甘さ控えめのデザインなので、可愛すぎるデザインが苦手な方にも使いやすいデザインとなっています。
参考:GINORI1735 HP「イタリアンフルーツ」
https://www.ginori1735.com/jp/ja/italian-fruit
ジオ・ポンティのデザインしたシリーズ:ラビリント シリーズ
ジノリのアートディレクターを務めていた巨匠「ジオ・ポンティ」が、1926年にデザインした迷路のようなパターンからインスピレーションを得てデザインされたシリーズです。パターンのカラーバリエーションは、サファイア(青)スカーレット(赤)エメラルド(緑)ネーロ(黒)の4色があります。
スッキリとしたインペロシェイプで、幾何学的なパターンのこのシリーズは、イタリアンモダンなどの洗練されたモダンスタイルのインテリアにピッタリのシリーズです。縁のみのパターンと、器全体にパターンが配置されているものがあります。同じシリーズや、白や無地の器と組み合わせたなど、メリハリのある組み合わせなどにもおすすめです。
参考:GINORI1735 HP「ラビリント」
https://www.ginori1735.com/jp/ja/labirinto
鮮やかな発色が特徴のシリーズ:コンテッサ シリーズ
職人の卓越したエアブラシ技法によって施された、美しい色付けが特徴的なコンテッサシリーズは、その名の通り「コンテッサ(伯爵夫人)」のような気品と美しさを兼ね揃えたシリーズです。シェイプはモダンなスタイルに合わせやすいインペロシェイプで、スッキリとしたシルエットながら鮮やかなカラーがテーブルコーディネートを引き立てます。
このコンテッサは縁の鮮やかなカラーを生かした、他のお皿と重ねてのコーディネートが美しく、全体に柄の入った器などと組み合わせて使うことで、コーディネートのバランスを取ることができます。カラーは柔らかなライトブルーの「インディゴ」、優しい黄色の「シトロン」、高貴な印象の青みの緑色である「エメラルド」、大人っぽい雰囲気の黒「オニキス」となっており、インディゴやシトロンは明るいカラーのインテリアスタイルに、エメラルドとオニキスはダークトーンなインテリアスタイルにおすすめです。
参考:GINORI1735 HP「コンテッサ」
https://www.ginori1735.com/jp/ja/contessa
まとめ
イタリアの老舗であるジノリは、高級陶磁器ブランドのイメージからクラシックなスタイルが多いように思われていますが、巨匠ジオ・ポンティや、現在活躍しているアーティスト「ルークエドワード・ホール」や「ルカ・ニケット」などともコラボを行い、アーティステックなアイテムやモダンなデザインのアイテムも扱っています。
老舗ブランドの卓越した技術力に、洗練されたイタリアンモダンデザインを組み合わせたアイテムは、300年近い時の中で時代の流れに合わせて変化し続けてきたジノリの精神を感じさせます。クラシックスタイルが好きな方やモダンスタイルが好きな方、格好良いイタリアンモダンインテリアに似合うテーブルウェアをお探しの方は、ぜひジノリのアイテムを取り入れてみてはいかがでしょう。
参考:GINORI1735 HP
https://www.ginori1735.com/jp/ja
参考:GINORI1735 HP
https://richardginori.co.jp/