2022/01/11
マルニ木工 の人気の秘密を探る!曲木等の工芸技術の工業化を推し進めた日本有数の家具ブランド
広島県といえば府中が家具の名産地として有名ですが、府中から少し離れた宮島では「宮島細工」という伝統工芸があります。古くは江戸の終わり頃、厳島神社建立のために京都などから宮大工や指物師が集い、その技術からロクロ加工や彫刻などの技術が発展し宮島細工となりました。
そんな伝統工芸「宮島細工」の息づく宮島に拠点を置くのが、今回ご紹介する「マルニ木工」です。曲木や彫刻など工芸技術を工業化することで発展してきた木製家具の老舗メーカーの一つとして知られ、クラシックなテイストのアイテムから、デザイナーとのコラボによるミニマルなモダンスタイルのアイテムまで扱い、木材の質感や質の良いクオリティなどで人気となっています。今回はそんなマルニ木工の魅力について、探っていきたいと思いますので、木製の家具をお探しの方や、日本の家具ブランドに興味のある方など、ぜひインテリア作りの参考にしてみてください。
目次
マルニ木工 が何故支持されるのか?インテリアのプロがその人気の秘密を紐解く
マルニ木工とは?
マルニ木工の創業者「山中武夫」は、木材を巧みに加工する宮島細工などの伝統工芸に心を奪われ、独学で機械や家具作りを学び、「工芸の工業化」目指しました。そんな山中氏によって、マルニ木工の前身である「昭和曲木工場」が設立されたのは1928年のこと。ドイツの家具メーカーで曲木家具製造のパイオニアである「トーネット社」などの技術を参考に、当時高度な技術を必要とした曲木家具の製造を成功させ、戦争が始まるまで椅子を中心とした家具作りを行いました。
戦争が始まると、多くの技術力のある家具メーカーがそうであったように、マルニ木工もまた軍需品の製造へと駆り出されることとなります。高い技術力を持っていたマルニは、戦闘機の尾翼や燃料タンクの製造などを手掛けることになり、この経験はマルニ木工の技術力をさらに飛躍させることになりました。その後、戦後の大きく変化していく日本人のライフスタイルに合わせ、マルニ木工は洋家具作りを行っていくことになります。
昭和後期にかけて応接室やリビングといった西洋式のライフスタイルが定着していく中、現在のマルニ木工のトラディショナルシリーズに分類されるような、欧米風のクラシック家具シリーズが多く生み出されました。それまで、職人の手によって一つ一つ作られていた彫刻入りの高級家具作りを工業化に成功したことも、戦後のマルニ木工を躍進させました。
そんなマルニが転換期を迎えることになったのが、1990年代後半から2000年代のこと。バブル崩壊の経済不況と、人々の家具需要の変化も相まってマルニ木工は何度もピンチを迎えることになりますが、起死回生の手段は、外部デザイナーとのプロジェクトにありました。元々の高い技術力に、「深澤直人」をはじめとしたデザイナーによるデザインを取り込むことで、シンプルかつモダンで高品質な木工家具ブランドとしての立ち位置を築き上げることに成功します。「100年後も定番として愛される家具」を作ることを目指し、日本独自の木製家具への美意識を世界へと発信する家具ブランドとして、現在も家具作りに励み続けており、その根底には創業当時から続く「工芸の工業化」という一貫した姿勢がブランドを支え続けているのではないでしょうか。
参考:マルニ木工 HP「マルニ木工の歴史」
https://www.maruni.com/jp/company/history
参考:国際平和拠点ひろしま「老舗と戦争 マルニ木工」
https://hiroshimaforpeace.com/long-established-maruni-wood-industry/
マルニ木工のスタイル
現在マルニ木工のアイテムは、シンプルでモダンなテイストの「スタンダード」シリーズと、ヨーロッパのクラシック家具テイストの「トラディショナル」シリーズの2つのテイストのシリーズに分かれています。二つのシリーズのテイストについて、詳しく見ていきましょう。
トラディショナルシリーズ
トラディショナルシリーズでは、日本の住宅に適したサイズ感のクラシックなデザインのアイテムを数多く扱っており、イギリスやフランスの伝統的な様式を踏襲した優雅で気品のある家具シリーズを取り揃えています。宮島細工で発展したロクロ加工や彫刻などの伝統技術を、マルニ木工の得意とする「工業化」することによって、上質でクラシカルなデザインの家具が比較的手の出しやすい価格帯となっています。
スタンダードシリーズ
スタンダードシリーズでは、使い勝手の良いシンプルモダンなデザインのアイテムを扱っているシリーズで、特に世界で活躍する日本人デザイナー「深澤 直人」やイギリスのデザイナー「ジャスパー・モリソン」などの著名なデザイナーとの共同によるコレクションが人気となっています。北欧モダンスタイルや、ミニマルモダンスタイルなど、シンプルで飽きの来ないインテリアスタイルにおすすめのシリーズです。
マルニ木工の評判
クラシックデザインからモダンデザインまで、幅広いスタイルの木工家具を扱うマルニ木工。その使い心地がどのようなものなのか、マルニ木工のアイテムの中でも特に人気の「HIROSHIMA アームチェア」(下記画像参照)を実際に使用している方の感想を参考に、その魅力を探ってみましょう。
座り心地最高◎つるっとした丸っこいフォルムが最高に素敵‼️張り地もたくさんの中から選べます。ミナペルホネンのものもあります😊ですがシンプルに飽きず長く使えるようにこちらを選びました。全体が白なのでアクセントにもしたかったです(*^^*)とってもお気に入り‼️✨
ずっと木目を触っていたいくらい綺麗で、肌触りのよい椅子です。
座り心地は、座ってみれば納得します。
木製の椅子ですが座り心地が良く、木の質感や角の丸い優しげなフォルムが人気の様子。背もたれが身体に沿うよう弧を描いており、適度な角度でゆったりとくつろいで座ることができます。シンプルなデザインだからこそ、マルニ木工の確かな技術力が感じられる代表作となっており、アップル社の新本社に採用されるなど世界的にも評価の高いアイテムです。本当にシンプルなデザインですが、マルニ木工が長年クラシック家具を作るときに使用してきた高度な曲面加工技術が存分に活かされたデザインとなっており、その高い技術力は実際に座ってみた座り心地から実感することができます。
マルニ木工 が好きな方におすすめブランド
日進木工
1946年創業の日進木工は、家具の名産・飛騨高山に拠点を置く日本の木製家具ブランドの一つです。元々はスコップや鎌の柄を生産していましたが、曲木を取り入れた椅子やソファ作りを経て総合家具メーカーへと発展していきます。飛騨の匠の持つ伝統技術を生かしたモダンなアイテムを扱っており、シンプルで爽やかな気持ちの良いデザインはマルニ木工のスタンダードシリーズのアイテムとの組み合わせも楽しめます。マルニ木工より価格帯が低めなので、予算に合わせて上手に組み合わせて取り入れてみてください。
参考:日進木工 HP
https://www.nissin-mokkou.co.jp/
▼日進木工についてさらに詳しく
飛騨産業
1920年創業の、100年以上続く飛騨の老舗家具メーカー飛騨産業は、飛騨の職人たちが曲木家具作りを始めたことからその歴史がスタートしています。豊富な商品ラインナップと、上品なモダンテイストから北海道民芸家具などのドラマチックな雰囲気のトラディショナルなテイストまで扱っており、木の性質や質感など素材の個性が引き立つアイテムが印象的なブランドです。マルニ木工同様古くから日本の木製家具ブランドとして活動しており、高い技術力と品質、豊富な木材加工技術を有しており、木の家具をお探しの方は、ぜひマルニ木工と一緒にチェックしておきたいブランドの一つです。
参考:飛騨産業 HP
https://kitutuki.co.jp/
▼飛騨産業についてさらに詳しく
プロが選ぶ!マルニ木工 の代表的なおすすめアイテムを5選
マルニ木工 のおすすめテーブル
無垢天板の豊かな表情を楽しむ:MALTA ダイニングテーブル
シンプルモダンなデザインを得意とする深澤氏らしい、無垢天板の持つ素材の良さを活かしたシンプルなダイニングテーブルシリーズ「マルタ」。1.8m〜3.2mまでの豊富なサイズラインナップと、どんなデザインの椅子にも合わせやすい普遍的なデザインが魅力であり、無垢の木材の持つ木の質感や変化など、ありのままの素材感を長い年月を掛けて楽しむことができます。
スチールレッグとウッドレッグの2種類のレッグタイプから選ぶことができ、スチールレッグタイプでは3.2mの大型サイズまで対応可能となっているので、大きなダイニングテーブルを探している方などにもおすすめのアイテムとなっています。オーク材とウォルナット材の2つの樹種と計5色のウッドカラーのバリエーションがあるので、フローリングのカラーや全体の雰囲気に合わせて選びやすく、コーディネートしやすいのも魅力です。北欧モダンやナチュラルテイストのインテリア、ミニマルスタイルなインテリアなどにおすすめのテーブルです。
参考:マルニ木工 HP「MALTA ダイニングテーブル(スチールレッグ)」
https://www.maruni.com/jp/products/list/list-detail?lp=1887-93-1870
無垢材×カラースチールのテーブル:T&O テーブル
ジャスパー・モリソンによってデザインされた「T&O」シリーズのテーブル。このシリーズは、木材とスチール素材の異なる素材を巧みに組み合わせたシリーズとなっており、無機質なスチールと柔らかな木材の表情のコントラストが印象的なシリーズとなっています。四角と丸と線で構成された幾何学的なフォルムと、カラーリングされたスチール素材がなんともキュート。スチールのカラーバリエーションは、レッド・ブラック・グリーンの3色から選択でき、レッドを差し色としたメリハリの効いたコーデや、珍しいグリーンを取り入れたコーディネートも楽しむことができます。
スッキリとシャープな印象ながらどこか柔らかさの感じるテーブルなので、北欧家具などとの相性も良く、またインダストリアルなテイストのスチール素材を使ったチェアなどとも相性が良いテーブルです。印象的な脚の形がワンポイントとなっているので、椅子の形はシンプルなものなどもマッチします。ミニマルモダンやインダストリアル風インテリア、コンテンポラリーテイストのインテリアなどにおすすめのテーブルです。
参考:マルニ木工 HP「T&O テーブル」
https://www.maruni.com/jp/products/list/list-detail?lp=1576-92-2404
マルニ木工 のおすすめチェア
アームチェア:Roundish アームチェア
深澤氏によってデザインされた丸みのあるフォルムが特徴の「ラウンディッシュ」シリーズに2018年に新たに追加されたアームチェアになります。帯状の薄い板をぐるりと巻いたような特徴的なデザインは、身体をすっぽりと包み込むような座り心地となっており、心地良く身体を安定して包み込むので長時間座っていても疲れにくくなっています。木の種類はビーチ材・オーク材・ウォルナット材の3種類があり、カラーバリエーションは計7色、板座タイプ・張地タイプの2つのシートから選ぶことができます。
成形合板によって滑らかな曲線を描いている快適な木製シェルは、座り心地はもちろん、そのコロンとした形状がアイコニックな存在感を放っており、表面の木目の流れるような表情も相まって森の中に転がる木の実のような可愛らしい印象を持っています。ダイニングルームを家族の集まるほっこりとした空間に演出したい時などにおすすめのチェアです。
参考:マルニ木工 HP「Roundishアームチェア」
https://www.maruni.com/jp/products/list/list-detail?lp=2385-31-0000
滑らかな曲線のチェア:Tako アームチェア
あえて曲木加工を使わず、切削加工によって曲線を作りたした、深澤氏デザインの「Tako」シリーズのアームチェア。背もたれから後脚とアーム・前脚へと木の枝のように分かれていく有機的な形が印象的なアームチェアとなっており、広めの座面とゆったりと包み込むようなフレームによってくつろいだ姿勢での使用も快適となっています。滑らかな曲線美はどこか艶かしく、しかしながら品のある美しい佇まいは、樹の枝が伸びていくような生命力を感じさせるオーガニックなチェアとなっています。
滑らかな曲線のシルエットが美しいチェアなので、上質な空間の演出や、ゆったりと寛ぐような空間など、上品なインテリアスタイルなどにもおすすめです。同じタコシリーズのテーブルはもちろん、海外ハイブランドのアイテムとの組み合わせの相性も良く、タコアームチェアのシルエットを生かすように、周囲のインテリアをシンプルにするなど、インテリアのメインとしての使用もおすすめです。
参考:マルニ木工 HP「Tako アームチェア」
https://www.maruni.com/jp/products/list/list-detail?lp=2563-61-0000
個性的な左右非対称のシルエット:SANAA チェア
妹島和世と西沢立衛の2名による建築家ユニット「SANAA」が、「nextmaruni」シリーズのためにデザインした、ウサギのシルエットのような個性的なチェア。耳の大きさは手書きのような左右非対称となっており、ピンク・グリーン・イエロー・ホワイトベージュ・ブラウン・ダークグレーの計8色の豊富なカラーラインナップを持つポップなチェアとなっています。軽量でコンパクトなサイズ感は、使い勝手が良く、限られた空間にも対応できます。また、サイズバリエーション豊富で、ノーマルサイズ・ミニサイズ・ミニミニサイズの3種類もあり、お子様とお揃いにしたり、ミニミニサイズをインテリアのアクセントに使用したりなどもできます。
アルネ・ヤコブセンのセブンチェアを思わせるような、成形合板のシートとスチール製のシンプルな脚の構成は、ヤコブセン氏の成形合板チェアとのコーディネートの相性も良く、また、豊富なカラーバリエーションを活用してカラフルコーディネートなどもおすすめです。シートはうさぎを思わせる可愛らしいシルエットなので、お子様のいるご家庭や可愛いものが好きな方など、インテリアに取り入れてみてはいかがでしょう。
参考:マルニ木工 HP「SANAA チェア」
https://www.maruni.com/jp/products/list/list-detail?lp=2946-23-0000
まとめ
マルニ木工のアイテムの魅力の一つは、その巧みな木工加工技術によって表現される曲線的な滑らかなデザインです。トラディショナルシリーズとスタンダードシリーズは、一見全く異なるテイストの家具シリーズですが、洋家具作りで身につけた繊細かつ滑らかな加工術は、デザイナーとのコラボによるモダンデザインでも十分に活かされており、その根底にはマルニ木工の長年の「工芸を工業化」するための努力が支え続けています。
マルニのヒットアイテムであるヒロシマチェアは、最初は手作業による製造を行っていました。そんな複雑な工程を、マルニの技術者が機械化することに成功したことで、より複雑な加工を可能にしたのです。そう、まさに「工芸の工業化」をまたしても成功させたのです。このノウハウは他のアイテムの製造でも生かされ、製造効率や加工の自由度が大きく進歩したと言われています。
「工芸の工業化」によって進化を続けるマルニ木工のアイテム。そんなマルニ木工の家具をぜひインテリアに取り入れて、柔らかな曲線の温かい木製家具でくつろぎの空間を作ってみてはいかがでしょう。
参考:マルニ木工 HP
https://www.maruni.com/jp/