Iittala(イッタラ) の人気の秘密を探る。日常に取り入れやすいフィンランドの老舗食器ブランド
今なお人気の高い北欧モダンスタイルは、1940年代頃から60年代にかけて流行したことからデザインスタイルとして広く定着していきました。北欧の国々が独自のモダンスタイルを形成し始めたのは1930年代頃からと言われており、機能的なモダンデザインに、豊かな自然との調和や柔らかくも楽しげなカラーなど北欧独自の特徴が融合したスタイルとなりました。この北欧モダンスタイルはインテリアだけではなく、テーブルウェアにも大きく影響を与え、それまでのヨーロッパ風の食器などのデザインにも大きな影響を及ぼしました。
今回は、そんな北欧モダンスタイルの波をいち早くテーブルウェアのデザインにも取り入れた、フィンランドの老舗ブランドの一つ「イッタラ」をご紹介していきたいと思います。シンプルで機能的な食器を探している方や、同じシリーズで食器を揃えたいと考えている方、使い勝手の良い食器が欲しいと考えている方など、ぜひテーブルウェア選びの参考にしてみてください。
イッタラ が何故支持されるのか?インテリアのプロがその人気の秘密を紐解く
イッタラとは?
1881年、フィンランドの南にあるイッタラ村に、スウェーデンのガラス吹き工「ピーター・マグナス・アブラハムソン」によってガラス工場が設立されたことから、「イッタラ」の歴史は始まります。今でこそフィンランドを代表するガラス製品のブランドとして知られるイッタラですが、設立当初はフィンランドには熟練のガラス吹き工が不足しており、スウェーデンから17名のガラス吹き工を雇う必要がありました。
イッタラが自社のオリジナルデザインを初めて世に送り出したのは、1903年のこと。「グレートメン」と名づけられたそのガラスシリーズをデザインしたのは、イッタラ初の社内デザイナーに選ばれた鉄型の職長を務めていた「アルフレド・グスタフソン」でした。グスタフソンを自社デザイナーに採用したのは、当時のイッタラの役員であった「クラエス・ノルステット」で、彼はガラス工場の責任者を務めるだけではなく、製品の売り込みにフィンランド国内を飛び回るなど、イッタラの発展に大きく貢献しました。
しかし、第一次世界大戦の影響により、原材料の不足やインフレといった経済状況により、イッタラの状況は悪化。1917年、木材関連の会社である「アールストロムグループ」へと買収されることになります。アールストロムグループは1915年にカルフラガラス工場も手に入れていたことから、「カルフライッタラ」の名前でしばらくガラス製品が製造されることになります。
1919年から始まったフィンランドの禁酒法が1932年に解かれ、ガラス器の需要が高まると、カルフライッタラはデザイナーの「ゴラン・ホンゲル」を社内デザイナーとして迎える他、デザインコンペを開催します。そのコンペのプレガラス部門において2位を獲得したのが、現在のイッタラでも人気商品として知られている「アイノ・アアルト」シリーズでした。ガラス器の需要の高まりは工場の設備の近代化へと向かわせます。1937年になると、カルフラ工場とイッタラ工場の生産は分離され、カルフラは自動でのガラス生産の道へ、イッタラは手吹きガラスを中心とした職人による製造の道へと別れました。
第二次世界大戦によって材料と人員が不足すると、工場は生産の停止を余儀なくされます。戦後、46年に生産を再開すると、デザインを重視した製品の生産を行うようになり、国内外での市場で順調に売り上げを伸ばしていくことになります。
30年代〜40年代、アイノ・アアルトと「アルヴァ・アアルト」の夫妻や、「カイ・フランク」などのデザイナーによって、現在のイッタラへ通じるデザイン哲学が形成され、50年代から70年代にかけて「タピオ・ウィルカラ」や「オイバ・トイッカ」「ティモ・サルパネヴァ」などのデザイナーがイッタラを盛り上げました。デザイナーによるおしゃれなデザインと、高品質なものづくりのコンビが作り出すイッタラのチャームポイントが確立されたのは、この30年代〜70年代のデザイナーと職人の活躍が大きかったでしょう。
2007年にイッタラは、フィカースグループに買収され同社の傘下へと加わりました。日本では2017年にフィカースジャパンが設立され、イッタラのほかフィカース傘下の有名食器ブランドが、一部の直営店やアウトレットで一緒に見ることができます。また、楽天やamazonなどのネットショップでも取り扱いがあり、お値段もそれほど高い価格帯ではないので、比較的気軽に高品質でおしゃれなイッタラのアイテムを取り入れることができるようになっています。
参考:フィカースジャパン イッタラ「イッタラについて」
https://www.iittala.jp/aboutus/
参考:フィスカースグループ イッタラ「イッタラの歴史」(海外サイト)
https://www.iittala.com/fi-fi/meista/iittalan-tarina/iittalan-historia
参考:Wikipedia「イッタラ」(海外サイト)
https://en.wikipedia.org/wiki/Iittala
イッタラのスタイル
1946年にイッタラのデザイナーとなった「カイ・フランク」は、フィンランドの老舗陶器ブランド「アラビア」のデザイナーや、のちにイッタラと合併するガラスブランド「ヌータヤルヴィ」のアートディレクターを務めた人物でもあります。「フィンランド・デザインの良心」とも呼ばれたフランク氏は、使い勝手が良く、実用性があり、品質の良いアイテムを多く生み出したと同時に、少数生産のアートガラス製品も得意としました。幾何学的な無駄のないデザインを得意としながらも、民衆の生活に根付いた使い勝手の良さを忘れないスタイルは、彼がデザインした「ティーマ」シリーズが現在でもイッタラの人気シリーズであることからも察することができます。
イッタラのアイコン的存在といえば、「アイノ・アアルト」シリーズやアルヴァ・アアルトの「ベース」シリーズも忘れてはいけません。フィンランドを代表する建築家・家具デザイナーとしても有名な「アルヴァ・アアルト」が生み出した有機的なフォルムのフラワーベースは、イッタラのアイコンとして今もなお親しまれ続けています。また、アルヴァ氏の妻で同じくデザイナーであるアイノ夫人がデザインした「ボルゲブリック(現アイノ・アアルトシリーズ)」もまた、イッタラを代表する人気アイテムです。シンプルで何気ないガラスの器でありながらも、しっかりとした質の良さや洗練された佇まいは、現在でも人気の高いアイテムです。
イッタラのアイテムの特徴は、イッタラのデザインが花開いた30年代以降に活躍したデザイナーたちの信念を体現するかのように、高品質でシンプルなモダンスタイルが特徴的です。他のブランドのテーブルウェアとも組み合わせやすいスッキリとしたデザインでありながらも、しっかりとした作りが品の良さを窺わせています。北欧モダンなインテリアスタイルにはもちろん、和モダンスタイルやアーバンモダンスタイルなどにもおすすめです。また、豊富なカラーバリエーションと、海外ブランドでありながらも日本の食卓で重宝する小さめなお皿から、洋食で使い易い大皿まで、豊富な大きさのバリエーションも魅力の一つとなっています。
イッタラの評判
イッタラはデザインだけではなく、品質の良さや使いやすさにも早くからこだわりを持って作り続けてきたブランドです。ここではイッタラの人気アイテムシリーズの一つ、カイ・フランクのティーマシリーズを実際に使用されている方の感想を参考に、その実力を探っていきたいと思います。
最近購入して、使い心地に満足しているプレートです。
イッタラのティーマティーミ、12cmのプレート。
ホワイトとパールグレー、3枚ずつ購入しました。
適度の深さがあり、汁っぽいお料理のとりわけをするときなどにとても便利。
サラダを取り分けるときなどにも使っています。
ドレッシングをかけてもこぼれづらい、ちょっと深めなところがよき!なのです。
何度かご紹介しましたが、カレー皿に
使っているイッタラのティーマボウル、
パスタや煮物にも使えてすごく便利です。オススメはこのパールグレー!!
フランク氏が残した言葉に「必要な装飾は色だけ」とあるように、非常にシンプルなシルエットでありながらも、5色のバリエーションと豊富な大きさが使い勝手の良いシリーズとなっています。磁器であるため程よい重さがあり、食洗機、電子レンジ、オーブンなどにも対応していることもあり、その使いやすい大きさやデザインと相まって、ティーマシリーズはメインとして日常使いに使用している方が多くいらっしゃいます。注意点としては、カラーの入れ替わりが度々あり、廃盤色となったカラーなども過去にあるので、お気に入りを見つけた場合はまとめて購入しておいた方が安心のようです。
イッタラ が好きな方におすすめブランド
ROSENDAHL COPENHAGEN(ローゼンダール コペンハーゲン)
デンマークに1984年に創業した「ローゼンダール社(現ローゼンダールデザイン)」は、イッタラの製品を輸入する代理店としてスタートしました。そんなローゼンダール社が1992年に自社デザイン製品を扱うために設立したのが「ローゼンダールコペンハーゲン」です。イッタラのシンプルで機能的なデザインが好きな方なら心惹かれる、シンプルなデザインが魅力のブランドで、テーブルウェアのほか、テキスタイルやフラワーベース、保存容器やまな板などのテーブル周りやキッチン周りに取り入れたいアイテムも扱っています。
参考:ローゼンダール HP(海外サイト)
https://rosendahl.com/da/
ARABIA(アラビア)
1873年に、フィンランドのアラビア村に設立された製陶所としてスタートしたアラビアは、フィンランドの老舗陶器ブランドとして知られています。現在はイッタラと同じく、フィスカースグループ傘下のブランドの一つでもあり、イッタラ同様、激動の時代を生き抜き、北欧モダンデザインの開花を間近に体験してきた老舗ブランドです。シンプルなフォルムの磁器に、北欧らしい自然なモチーフや幾何学模様を描いた可愛らしいデザインが特徴的で、シンプルなイッタラのアイテムと組み合わせてのコーディネートもおすすめです。
参考:フィカースジャパン アラビア
https://www.arabiajapan.jp/
プロが選ぶ!イッタラ の代表的なおすすめアイテムを5選
使い勝手抜群のシンプルさ:Teema(ティーマ)シリーズ プレート
1952年、アラビアのデザイナーを務めていたカイ・フランクにより、デザインされた「キルタ」という陶器のシリーズが、ティーマの原型となっています。色という装飾以外を廃した、ミニマルモダンなデザインは、装飾的なデザインが主流であった当時、大きな反響を産みました。キルタは1952年からアラビアで生産されていましたが、1974年に生産を終了しており、その後1981年にデザインしたフランク氏自身によって、磁器のティーマシリーズとして復刻しました。
2005年からはイッタラブランドによって生産されており、初期のカラーからいくつか変更をしながらも、今も多くの人々の食卓で活躍し続けています。日常使いからフォーマルな食事の場でも使用できるスタンダードなデザインは、自宅の食器のメインメンバーとして多くの食事のシーンで活躍することでしょう。また、装飾的なデザインの食器とのコーディネートなどもおすすめです。
参考:フィカースジャパン イッタラ「ティーマ プレート 15cm ホワイト」
https://www.iittala.jp/products/detail.php?product_id=246
雫を思わせる凹凸模様が魅力:Kastehelmi(カステヘルミ)シリーズ ボウル
1964年に「オイバ・トイッカ」によってデザインされ、のちにイッタラと合併するガラスブランド「ヌータヤルヴィ」から発表されたガラス器のシリーズです。フィンランドの言葉で「露のしずく」を意味するカステヘルミの名前の通り、大小様々な大きさの丸い凹凸が連なるデザインが涼しげな印象となっています。シリーズには、プレートやボウル・グラス・保存ジャーなどの他、キャンドルホルダーやフラワーベースなどのインテリア小物も。
特にボウルは、ヨーグルトやアイスクリーム、フルーツなどの食べ物との相性が良く、朝食のテーブルや夏場の食欲が落ちている時などに、涼しげな器が食卓を盛り上げてくれることでしょう。意外と日本食との相性も良い器なので、大プレートに素麺や冷やしうどんを盛り、小ボウルに麺つゆなどの組み合わせもおすすめです。夏場だけではく、キラキラとした透明感のあるガラスと凹凸が作り出す陰影は、クリスマスディナーのような雰囲気のある食卓にもおすすめです。
参考:フィカースジャパン イッタラ「カステヘルミ ボウル 230ml クリア」
https://www.iittala.jp/products/detail.php?product_id=120
時代を越えて愛され続ける:Aino Aalto(アイノ・アアルト)シリーズ グラス
1932年に、当時のカルフライッタラのデザインコンペにて2位を獲得した「アイノ・アアルト」の「ボルゲブリック」グラスを原型にしたシリーズです。ボルゲブリックは、かつてはカルフラやリーヒマキガラスなどの工場で生産されていました。ある時期は、生産が停止されていた期間などもありながらも、現在でも多くのファンの心を魅了し続けています。過去に生産された製品でもヴィンテージとしても高い人気を誇っており、このデザインが長年多くの人々に愛され続けていたことがわかります。
イッタラが「アイノ・アアルトシリーズ」の名前で生産を開始したのは、1985年頃から。以来、イッタラを代表する人気シリーズとして、イッタラのアイコン的存在の一つとなっています。水の波紋からインスピレーションを得たデザインは、清涼感と美しさを感じさせると同時に、滑り止めの効果も発揮します。また、スタッキングが可能で、食洗機での使用も可能という利便性もまた、現在でも愛され続けている理由の一つです。
参考:フィカースジャパン イッタラ「アイノ・アアルト タンブラー ペア アクア」
https://www.iittala.jp/products/detail.php?product_id=376
涼しげな見た目が食欲をそそる:Ultima Thule(ウルティマ ツーレ)シリーズ グラス
1968年に「タピオ・ヴィルカラ」によってデザインされたウルティマツーレシリーズは、ラップランドの氷が溶ける様子をイメージしてデザインされました。ウルティマツーレとは、古典文学に登場する伝説の極北の島の名前です。フィンランドの神秘的な冬景色が、イッタラの長年の卓越した吹きガラスの技術によってこのデザインを現実に作り出すことに成功しており、氷でできたような美しくも自然の力強さを感じさせる器となっています。
氷を思わせる涼しげな見た目のウルティマツーレシリーズは、蒸し暑い日本の夏の食卓にピッタリです。プレートやボウル、ピッチャーなどもシリーズのラインナップにありますが、中でもグラスの種類は9種類と豊富です。お酒やジュース、お茶などが注がれた姿は思わず喉が鳴りそうなほど美味しそうな見た目をしているので、晩酌が日課の方などにもおすすめです。おつまみをいれやすい、同シリーズの小さなボウルも合わせていかがでしょう。
参考:フィカースジャパン イッタラ「ウルティマ ツーレ コーディアル ペア」
https://www.iittala.jp/products/detail.php?product_id=303
フィンランドの巨匠による名作:Alvar Aalto Collection(アルヴァ・アアルトコレクション)ベース
建築家や家具デザイナーとしても知られているフィンランドを代表するデザイナー「アルヴァ・アアルト」が、1936年に発表したベースは、翌年にはパリ万博にも出品されたアイコニックなガラス器です。フィンランドの湖の形、もしくは白樺の根元の断面など、その独特で有機的な形状は、何をモチーフにしてデザインされたかは謎のまま。しかしながらデザインされてから80年以上もの間、世界中で愛され続けてきたアアルト氏の名作として、イッタラのアイコン的存在でもあります。
大小様々な大きさのフラワーベースのほか、ボウルやキャンドルホルダーなどもシリーズに含まれており、この複雑は形状を作るためには、イッタラの熟練の吹きガラス職人が7人集まって力を合わせて作り出しています。生花などの植物を生けるのはもちろんのこと、キッチンツールやカトラリーの収納などの使い方もできます。透明感のあるガラス素材に独特なフォルムは、モダンなインテリア空間におすすめです。
参考:フィカースジャパン イッタラ「アルヴァ・アアルトコレクション ベース 160mm クリア」
https://www.iittala.jp/products/detail.php?product_id=30
まとめ
フィンランドの時代の流れとともに、技術を磨き大きく成長してきたイッタラ。ガラス工場から始まり、今では金属や木材、セラミックなど様々な素材を巧みに使いこなし、テーブルウェアだけではなくインテリア小物なども生み出しています。しかし中でもやはりガラス製品の扱いは目を見張るものがあり、ガラス製の美しい器は、家庭の食卓をより豊かに、そして鮮やかで楽しい時間を演出する名脇役として活躍してくれます。
食事の時間をもっと豊かにしたい方、お料理を引き立てる名脇役のお皿を探している方、飽きのこないデザインで質の良い食器を長く使っていきたい方など、ぜひイッタラのアイテムを取り入れみてはいかがでしょう。
参考:フィカースジャパン イッタラ
https://www.iittala.jp/