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      2020/02/07

【チャールズ・イームズの名作チェア】デザインした椅子の歴史と商品の魅力を徹底解説します

「チャールズ・イームズ」の名は、妻の「レイ・イームズ」とともに、「イームズ夫妻」や「チャールズ&レイ・イームズ」として皆さんも聞いたことがあるでしょう。ミッドセンチュリーを代表するアメリカのデザイナーであり、積層合板やプラスチック、金属などを使用して家具をデザインした、20世紀のプロダクトデザインに強い影響を与えた人物(たち)として有名です。

彼(ら)のデザインしたチェアは、今もインテリア業界で人気を誇る名作として発表から数十年経った現代でも人気は衰えていません。イームズのチェアとして知らなくても、映画やドラマ、テレビ番組や雑誌や広告など、あらゆるメディアの中にさりげなく採用されていたりするので、きっと皆さんもどこかで見たことがあるのではないでしょうか。

そんな魅力たっぷりのイームズのチェアについて、その歴史と魅力をご紹介していきたいと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

チャールズ・イームズのチェア、その歴史を紐解く

1907年「チャールズ・イームズ」は、アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスに1男第5子として生まれました。

12歳の時父が他界すると、母と姉と共に二人の叔母の家に移り住むことになります。その頃から写真を趣味にしていた父親の遺した機材を使い写真撮影を始めました。14歳の頃、高校へ通いながら放課後や週末にレイクリード・スチール社で製図工見習いとして勤め、設計や製図を身につけたといわれております。

イームズは1925年から1928年の間、奨学金を受け「セントルイス・ワシントン大学建築学科」へ通いましたが、近代建築に過度に熱をあげ過ぎたため、退学となってしまいます。ある教授は、「彼の物の見方はモダンすぎる」とコメントしており、当時からその斬新で挑戦的な資質が伺えます。ワシントン大学在学中、彼は最初の妻、「キャサリン・ウォーマン」と出会い、1929年に結婚します。

「チャールズ・グレイ」や「ウォルター・ポーリー」とパートナーを組み、1930年にはセント・ルイスで建築設計事務所を開設。その間に設計した「聖メリーズ教会」が「アーキテクチュアル・フォーラム」に取り上げられ、それを見たフィンランドの建築家「エリエル・サーリネン」が手紙を送ったことでサーリネンとイームズの交流が始まります。

エリエル・サーリネンの招待により、妻子と共にミシガンへ引っ越したイームズは、「クランブルック美術学院」に奨学生として入学します。またイームズは、のちに同校でインダストリアルデザイン学科長として教壇にも立ちます。

1940年、「エーロ・サーリネン」(エリエル・サーリネンの息子で、チャールズとは親友)とともに、ニューヨーク近代美術館開催の「オーガニック家具デザイン」コンペに、成型合板を使った椅子・棚・机を出品し6部門中2部門で優賞しました。

1941年、妻のキャサリンと離婚し、クランブルック美術学院に勤務する同僚である「レイ・カイザー」と再婚します。同年クランブルックの教職を辞しロサンゼルスへ移ると、「メトロ・ゴールドウィン・メイヤー」の美術部に勤めながら、素材としての木材の可能性を試す実験を始めました。

夫妻がさまざまな木材成型の技法を試す中で多くの発見し、合板の成型装置を発明するなど成型合板の技術を発展させました。アメリカ海軍からプライウッドの添え木、担架、グライダーシェルなどの開発の依頼が舞い込み、それらは第二次世界大戦で活用されました。

チャールズは、「デザインにあたっては必要性を認識することが第一条件である」と述べています。中でも脚用の添え木「レッグ・スプリント」は、第2次世界大戦終了までの間にのべ15万本以上も製造され、イームズの手がけた最初の大量生産品になりました。

1945年大戦が終結し戦後の経済成長が始まると、イームズ夫妻は、急速な変化を遂げる「アメリカの平均的な家庭においてさまざまな用途に使える家具が必要とされる」と考え、海軍のために考案した、「熱と圧力を加えて木材を成型する技法」を、家具にも応用できることを思いつきました。

というのも、戦後アメリカの住宅事情は劇的に変化し、復員軍人援護法によって、復員兵は大学の学位を取得してよりよい職業に就けることとなり、彼らのほとんどは自分の家と家庭を持ちたいと望みました。こうした動きの結果として生じた現象がベビーブームであり、郊外型住宅の拡大です。

そしてこれらの新築住宅に、家具が必要となりました。当時、プライウッドは建築用資材であり、家具の素材としては一般的ではありませんでしたが、イームズ夫妻はこの素材を好み、クッションを張る代わりに適切に成型したプライウッドを使うことで、大量生産が可能になると考えました。

こうした時代背景と共に生み出されたのが成型合板の椅子「プライウッドチェア」でした。

積層合板を使った製品の大量生産の実現に努める一方で、1942年から参加していた芸術雑誌「アーツ&アーキテクチャー(arts & architecture)」の企画であるケース・スタディ・ハウスに参加し、1949年に自邸である「No.8」を手掛けました。

太平洋を見下ろす崖の上に建てられたイームズ邸は、建築費を抑えるため、鉄骨から内装材に至る、その部材の全てがアメリカ国内で流通していた「既製品」によって構成されており、工業化時代の新しい建築のあり方を示すものとして、現代では記念碑的な位置づけをされています。

また、1950年代には、初期に手掛けた合板加工だけでなく、プラスチック、繊維強化プラスチック、ワイヤーを素材とした椅子をデザインし、家具メーカーのハーマンミラー社に提供しました。

チャールズ・イームズは、1978年8月21日、故郷セントルイスへの帰省中、心臓発作で息を引き取ります。現在は、「セントルイス・ウォーク・オブ・フェーム」にその名を刻まれています。

なお、妻レイ・イームズが息を引き取ったのは10年後の奇しくもチャールズと同じ日付、1988年8月21日であったそうです。成型合板やプラスチック、ワイヤーなど時代を先取るような挑戦的な素材を用いて家具を製作してきたチャールズ・イームズの作品は、現在ではミッドセンチュリー(1940年代〜1960年代)を代表する家具として幅広く認知されています。

今では当たり前のように使われている合板や、プラスチック、金属素材の家具も、開発当初は何度も実験を繰り返すことでようやく商品として完成させることができました。そしてその作品たちは、20世紀のプロダクトデザインに大きな影響を与えました。

第二次世界大戦とその後の経済の急速な発展という大きな変化を伴う時代のニーズを読む力と、臆さず新たな素材とデザインに挑戦する精神は、イームズ夫妻の作品に確かに息づき、今もその作品から力強いエネルギーを発しているように感じられます。

 

チャールズ・イームズのチェアの魅力

身体にフィットする座り心地

イームズのチェアといえば、当時の時代の先端を行く新しい素材と技法を用いて作ったデザインが特徴的です。しかし夫妻の椅子が、なぜ現代に至るまで世界的に評価を受け、ロングセラーとなっているかといえば、それは単に目新しさだけではなく、座る人の快適性を追求した座り心地にあるからだと言えます。

新しい素材に取り組む時、夫妻は何度も実験と研究を重ねてからデザインを完成させていました。時に必要とあれば、座り心地を良くするために新たな技法を生み出すことまでしました。イームズの代表的なチェアには、成型合板や成型プラスチックなど、人の身体にフィットする曲線があらかじめ「成型」されたシェルを使用しています。

そのため一見固そうで座りにくそうな印象を受けるシェル型のチェアも快適な座り心地となっているのです。

ミッドセンチュリーを代表するアイコン的存在感

未だ人気のアメリカンミッドセンチュリー(1940年代〜1960年代)テイストのインテリアといえば、ポップで近未来的なデザインや、モダンテイストのシンプルで新素材を利用した古新しい印象のアイテムを使ったコーディネート。とはいえ、あまりに先進的なデザインやポップすぎるアイテムを日本の住宅に取り入れるのは、なかなかハードルが高いのではないでしょうか。

イームズのチェアは、シンプルなデザインでありながら、豊富なカラーバリエーションと当時の新素材新技法を使った取り入れやすいアイテムとして人気です。もちろんイームズのチェアがデザインされた時期は、まさにミッドセンチュリーど真ん中の時代。憧れのアメリカ映画やホームドラマなどにチラリと登場して心惹かれていた世代の人も多いはずです。

上の世代の人は学生時代に憧れたアイテムとして、若い世代には目新しさとポップな印象のアイテムとして人気です。ミッドセンチュリーを代表するデザイナーとして広く知られているイームズ夫妻のチェアは、どの世代にも愛されるアイコニックなアイテムとしての魅力も持っています。

シンプルで軽くて扱いやすいデザイン

イームズ夫妻が活躍した時代は、第二次世界大戦とその後の経済が急速に発展し、住宅事情が大きく変化した時代でした。家で家族と過ごすことの多くなったこの時代、夫妻がチェアをデザインする際に求めたのは、「最大多数の人びとに最のものを、最低価格で提供する」こと。つまり多くの人々に提供できるような「大量生産可能」で「低価格」であることでした。

その結果イームズのチェアは、装飾性のないシンプルで、手頃な値段の商品を多く発表してきました。(もちろんイームズ夫妻は商業的な思考だけでデザインを作ったわけではなく、夫妻らしい好奇心とチャレンジ精神を持ったデザイナー的思考により、挑戦的な素材を用いてデザインを作り上げています。)

そんなイームズのチェアは、ダイニングやリビングはもちろん、書斎や玄関、寝室などあらゆる部屋に置いても、そのシンプルな外観と持ち運びしやすい手軽さによって、場所を選ばず活躍してくれます。例えば壁際にちょっとした物を置くための台の代わりに使ったり、キッチンにちょっとした休憩椅子として置いておいても、邪魔にならなずにしっかり馴染んでしまうのが、イームズのチェアの魅力と言えます。

 

チャールズ・イームズがデザインした代表的な名作チェア6選

ブライウッド・チェア:Herman Miller

1946年に発表された「プライウッドチェア」は、クッションがなくても快適な座り心地を提供する量産が容易なチェアとして開発されました。成型合板を巧みに組み合わせ、無駄な装飾を省き、極限までシンプルさを追求した上品なフォルムが目を惹く作品で、1999年「タイム誌」のミレニアム号で「20世紀最高のデザイン」に選ばれました。表面の木目の流れるような美しさと、成型合板の持ち味を生かした高いデザイン性、シンプルでコンパクトな使い勝手の良さが魅力のチェアです。

プライウッドチェアが開発された当時は、木製の家具が主流であり、成型合板を使用した家具は一般的ではありませんでした。そんな中、イームズ夫妻は成型合板のコストや生産量、デザインの自由度の高さに着目し、度重なる実験の末、軽量で複雑な曲線を持った、無駄のないスッキリとしたデザインのプライウッドチェアを開発することに成功しました。

このプライウッドチェアの開発と成型合板を使用した手法は、既成概念に縛られない画期的な手法として、プロダクトデザイン界に大きな足跡を残しました。イームズ夫妻は、比較的安価な素材と大量生産を活用しながらも、人間の身体にフィットするシートと背もたれを持った、画期的で快適な座り心地のチェアを生み出すことに成功したのです。

身体にフィットする優しい曲線とゆったりとした座り心地が特徴的なプライウッドチェアは、成型合板の前脚・後脚・背もたれ・座面・フレームの5つのパーツを特殊な技術で組み合わせることでその座り心地を実現しています。

また、座った時にゆったりと身体を預けれるように、座面の位置が低めに設定され、背もたれと座面の幅を広く持たせており、適度な「しなり」のある成形合板の特性と、脚部に天然ゴム製のショックマウントが装着されることで、身体を預けた際に衝撃を吸収し、快適な座り心地を実現します。

一見、木製の固いイメージがするプライウッドチェアですが、想像以上に座り心地も快適で、長時間でも疲れにくいチェアとなっています。

価格:¥112,000〜266,000
サイズ:W55.9×D61.6×H67.4cm(ラウンジチェア)
W49.3×D55.3×H73.1cm(ダイニングチェア)

ラ・シェーズ:Vitra

1948年に発表された「ラ・シェーズ」は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)主催のローコストデザインコンペティションに出品された作品の一つです。しかし、当時の技術では製作が難しく、多額の費用を必要としたため、カタログに掲載されるもののコンペでは入選する事無く、プロトタイプの数点のみが製作されただけでした。

ただ、発表当時から作品自体の評価は高く、幻の名作とされており、1989年頃には技術の進歩によって市場に出回るようになるとその名声は更に高まりました。また、イームズ夫妻が最も愛した家具として語り継がれており、彼らのデザイン・思想・歴史、その全てが凝縮された一脚と言われています。

ラ・シェーズ は、芸術家「ガストン・ラシェーズ」のふくよかな人体彫刻「フローティング・フィギュア 」(※参考写真)という作品からインスピレーションを受けたものとされており、複雑な曲線を描く有機的なフォルムは、自由度の高いプラスティック成形技術と抽象アートで培われた彼の美的センスが最大限に活かされた作品と言えます。

人を模した彫刻から、有機的フォルムの独特な寝椅子を作り出したイームズの発想は、斬新で挑戦的であり、それゆえに発表から70年以上過ぎた現代でもラ・シェーズには古臭さはなく、むしろ新しさを感じるのでしょう。

試行錯誤の上、何十工程も経て造り上げられたグラスファイバー ( FRP製 ) のシートを、細い5本のスチールロッドと、オーク材をクロスさせたベースによって支えた浮遊感を感じさせる独特のフォルムを持ったこのチェアは、普通の家具とは一線を画すインパクトのある造型美を生み出しています。

滑らかな凹凸とポッカリと穴の開いたシェルはイームズ作品の中でもめずらしい作品。見た目だけではなく「寛ぐ」という本質を損なうことなく、様々な体勢でも身体にフィットし、正面を向いて座ったり斜めに凭れ掛かったり、シェーズロングの様に脚を乗せて横向きで座ったり、片肘を突いて寝そべったりと、多様な座り方に対応できるラウンジチェアとなっています。

価格:¥937,440(税込)
サイズ:W150×D82.5×H87cm

 

プラスティック・シェルチェア:Herman Miller

1950年に発売された「プラスチックチェア」は、1948年のニューヨーク近代美術館(MoMA)が主催した「ローコスト家具デザイン国際コンペ」のためにデザインされたものでした。

「多くの人々のニーズに応えるためには、小さなアパートや家に適した家具が必要です。入手しやすい価格でありながら優れたデザインで、コンパクトでありながら快適で、移動、収納、手入れが簡単な家具。つまり、現代生活のニーズを満たすように計画され実現された、量産型の家具です」と、当時のコンペのカタログで紹介されている通り、コンパクトなデザインと、当時では珍しい「ガラス繊維強化ポリエステル樹脂」を使用した軽量で扱いやすい、大量生産された初のプラスチック製チェアでした。

なお、現在では正規販売メーカーのハーマンミラー社では、環境に配慮して100%リサイクル可能なポリプロピレンに素材を変更していますが、同様に軽くて扱いやすい素材です。

家具デザイナーとしての目標を、チャールズ&レイ・イームズ夫妻は次のように語っています。「最大多数の人びとに最のものを、最低価格で提供すること」1949年、ピッツバーグのデパート王で現代建築の愛好家であった「エドワード・カウフマン」がシェルチェアの素晴らしさを認めた言葉が残っています。

デトロイト美術館で開催された「モダンリビングのためのデザイン展」のカタログの序文より、「おそらく同業者の誰よりも、チャールズ・イームズは、かの有名な“イームズチェア”の開発によって、これまで以上に目的に適う物をより費用を抑えて生み出すという、現代のデザイナーの誰もが抱く望みを叶えたのだ」と書いています。

発売からわずか1年で有名となり、それから70年以上が過ぎた現在でも、イームズシェルチェアはその革新的なデザイン、実用性、多機能性、快適性によって、今でも称賛され続け、高い人気を誇っています。

シェル部分はサイドチェアタイプとアームチェアタイプがあり、色が豊富で、脚部のパーツの種類を自在に組み合わせて使用できるため、使用シーンを選ばずに活躍するチェアです。10色以上もの豊富なシェルカラーは、素材に練り込んであるため、長年にわたって使用しても色褪せることがありません。

脚部の「エッフェルベース」パーツは、スチールロッド構造とスペーサーに関する数々の研究から生まれた脚部パーツで、安定性と耐久性をさらに高め、長期のハードな使用に耐えうるベースを目指して、ハーマンミラーが長年にわたり改良に取り組んだもので、特徴的なシルエットが人気です。

上の写真でも使用されている「ダウェルベース」の脚部パーツは、元はチャールズ・イームズと建築家エーロ・サーリネンが生み出した「オーガニック・チェア」という名のチェアを起源としもので、メープル/エボニー/ウォールナット/ホワイトアッシュの4種から選ぶことができます。脚部パーツにはその他にもシンプルな「4レッグベース」や、積み重ねることができる「スタッキングベース」、アームチェアタイプには「ロッカーベース」ロッキングチェアになるパーツも用意されています。

発売当初からのデザインを守り、適度な弾力を持つ背座一体の座面が、座った時に身体のラインに沿ってゆっくりと包み込み、シェルの背もたれは柔軟性があり、シートポケットは深く、シート手前のフロントエッジは緩やかに下向きにカーブしているため、長時間快適に座り続けることができます。

価格:¥38,000〜62,000(サイドタイプ張り地なし)
¥70,000〜94,000(サイドタイプ張り地あり)
¥54,000〜84,000(アームタイプ張り地なし)
¥87,000〜119,000(アームタイプ張り地あり)

サイズ:W46.5×D55×H81cm(サイドタイプ)(張り地なしスタッキングベースのみH80cm)
W62.5×D60×H80.5cm(アームタイプ)(張り地なし4レッグベースのみH79.5cm)
W62.5×D69×H67cm(アームロッカーベース)

 

ワイヤーメッシュ・チェア:Herman Miller

1951年に製品化された「Eames Wire Chair(イームズワイヤーチェア)」は、イームズが手掛けたシリーズの中でもワイヤーのみで形成された斬新なチェアです。1940年代プライウッド、プラスチックと新しい素材の可能性を模索し続けたイームズが、1950年代に次に選んだ素材はスチールワイヤーでした。

1950年代初期にワイヤーを曲げたり接合出切る方法を研究し、試行錯誤の末、軽量でありながら耐久性に優れ、リーズナブルで高品質なワイヤーチェアを完成させました。デザインはシェルサイドチェアと同じフォルムを採用しており、座面に座るとスチールワイヤーが締まり、脚部の強度が増すようにデザインされています。

それまでにもワイヤーメッシュを使用した製品はありましたが、軽量なワイヤーチェアを作ったのは、イームズ夫妻が初めてでした。

コストを抑えながら、希望通りのデザインや強度を実現するため、イームズ夫妻はチェアのフレームに2重構造の細径ワイヤーを使用しました。この技術はアメリカで初めてデザインのための機械特許を取得しました。またこのチェアは、外縁にワイヤーメッシュを用いていないため、軽量となり、製造コストも低く抑えることができたのです。

開発当初、チェアのパッドはレザーではなくファブリック製でしたが、パッドがワイヤーメッシュの上であちこちずれてしまう問題が起きたため、イームズ夫妻はデザイン学校と協力しながら適切なパッドを作る設備を開発し、それを自分たちのスタジオに移してパッドを製造するという方法をとりました。

イームズデザインのコンセプトでもある、「リーズナブル・実用性・デザイン性」に優れたワイヤーチェアは、半世紀以上に渡って色褪せることなく世界中で愛され続ける椅子となりました。

シェル部分は縦横に走るワイヤーが縦10本、横25本のロッドが交差したメッシュ構造で、背座一体となって緩やかなカーブを描き、脚部にはシェルチェアでもお馴染みの「エッフェルベース」用いられたシャープなビジュアルとなっています。

シートにはパッドなしのシート面がそのままのワイヤータイプの他、2種類のレザーシートパッドのオプションがあります。レザー張りのシートバッド付きのタイプと、シートと背もたれにレザーパッドがついた通称「ビキニ」と呼ばれるタイプです。

シャープなフォルム、繊細なシルエット、見る角度、映る影すら目を引くワイヤーチェアは、その存在感とデザイン性、そして実用性を兼ね揃えたチェアとなっています。

価格:¥93,000〜147,000
サイズ:W50×D52.5×H84cm

 

ラウンジチェア&オットマン:Herman Miller

1956年に発表された「イームズラウンジチェア&オットマン」は、19世紀のイギリスのクラブチェアをイームズ風にモダンに生まれ変わらせた作品で、今までにない全く新しい存在として、20世紀を代表するファニチャーデザインの一つと言われています。

イームズ夫妻は、今までの家庭のリビングルームに多く見られる「ラウンジシーティングをより良いものにしたい」と考えたことから、このチェア&オットマンを生み出しました。実際、発表後ほとんどすぐに、このデザインはアメリカンデザインの象徴となり、現代ではニューヨーク近代美術館やシカゴ美術館に収蔵されているだけでなく、あらゆる場所にスタイルと快適性を届け続けています。

「使い込まれた一塁手のミットのように、座る人を暖かく包み込むチェアを目指した」とチャールズ・イームズ自身がそう語ったこのチェアは、「現代生活のストレスを忘れさせてくれる特別な空間となるチェア」を目指して作られました。

快適性を重視し設計されたチェアは、座面が傾斜しており、脊椎下部にかかる重みを適切な形で背もたれに分散させます。腰部もクッションで支えられ、ゆったりとした座り心地を実現しており、下部のクッションが、腰をしっかりサポートするためリラックスでき、角度のある座面により胸部もサポートされるため、快適な姿勢で読書をしたり、映画を見たり、会話を楽しんだりすることができます。

ラウンジチェア&オットマンは、ディテールにまで細心の注意を払って作られており、ウッドの美しさを損なうことなく、クッションとシェルを固定する革新的な金属部品から、それぞれの部品を今もなお手作業で組み立てる工程に至るまで、職人技術と製造工程とが相まって真の本物が作り続けられています。

シェル部分には7層のプライウッドを使用、クッション部分にはそれぞれ張地が張られ、交換が可能となっています。使用素材のうち29%がリサイクル可能ですが、年月を重ねていくにつれ円熟味が増していく様子を次世代へ受け継ぎながら楽しむ方が多いでしょう。

また、イームズラウンジチェア&オットマンは多くのメディアに登場しており、「Frasier」「House」といったテレビ番組や、数多くのスタイリッシュな映画のインテリアでも目立つ形で取り上げられました。それゆえ、あまりにも有名になったため、その構造は登録商標となっています。

価格:¥644,000〜1,020,000/¥736,000〜1,047,000(トールタイプ)
サイズ:(チェア)W83.2×D83.2×H81.3cm
W83.2×D87.6×H87.6cm(トールタイプ)
(オットマン)W66×D54.6×H43.8cm(2タイプ共通)

 

アルミナム・グループ:Herman Miller

1958年にデザインされた「イームズアルミナムグループチェア」は、アメリカの実業家「J.アーウィン・ミラー」が「エーロ・サーリネン」に設計を依頼したコロンバスのミラーの自宅のため、サーリネンが屋外用に上質なチェアが欲しいと考え、イームズ夫妻に依頼したことで誕生しました。

夫妻は最初、アルミダイキャストを使用したシートフレームに合成繊維のメッシュ素材をぴんと張ったチェアをデザインしました。この背もたれと座面のサスペンションは、イームズ特有の硬いシェルという従来のコンセプトからの脱却を意味し、高度な技術的成果を達成しました。

ハーマンミラー社により、1958年から屋内用のアルミナムグループチェアの製造も始まっており、当初のメッシュ仕様は発売後まもなく製造が中止されましたが、代わりにファブリックとレザー張りが登場し、約5cm間隔でリブが施された外観はすっきりと洗練されたデザインとなりました。

アルミニウム製のシートフレームに、一枚ものの張地をぴんと張ることで、柔軟性のある高度なサポート性が生まれた特徴的な座面は「シッティングポケット」と呼ばれており、人の身体にしっかりと馴染むようにデザインされています。

イームズアルミナムグループチェアは豊富なバリエーションを持ったシリーズとなっており、オットマンやサイドチェアをはじめ、調節機能のついたマネジメントチェアや背もたれの高いエグゼクティブチェア、ヘッドレストのついたラウンジチェアなどが用意されています。

すっきりとした曲線を描くイームズアルミナムグループチェアシリーズは、張り地の選択肢もファブリック、ビニール、レザーと豊富であり、カラーバリエーションも豊か。ユーザーの身体にしっくりなじみ、いつまでも快適な座り心地とき、あらゆる空間を引き立て、ホームオフィス、ダイニングスペース、リビングルームにもマッチする高いデザイン性が魅力です。

フレームとベースはアルミニウム製で、軽量でありながら耐久性にも優れており、環境にも優しく67%が再生素材で作られ、寿命を終えた後は90%がリサイクル可能となっています。アルミナムグループチェアは、シンプルなシルエット、革新的な素材使い、そしてサスペンションの快適性により、オフィス、家庭を問わず、使用でき、オフィス家具メーカーとして有名なハーマンミラー社のチェアの中でも、最も人気のあるアイテムとして発売から60年経った今も売れています。

価格:¥116,000〜154,000(オットマン)
¥161,000〜281,000(サイドチェア)
¥211,000〜309,000(マネジメントチェア)
¥229,000〜330,000(エグゼクティブチェア)
¥240,000〜321,000(ラウンジチェアヘッドレストなし)/¥275,000〜341,000(ヘッドレスト付き)

サイズ:W54.6×D53.5×H46.4cm(オットマン)
W58.5×D56×H83cm(サイドチェア)
W58.5×D56×H79〜86.5cm(ガス圧シリンダータイプH79〜91,5cm)(マネジメントチェア)
W58.5×D61.5×H96.5〜104cm(手動・ガス圧共通)(エグゼクティブチェア)
W61.5×D72.5×H43〜86cm(ラウンジチェアヘッドレストなし)/W65.5×D82×H37〜98.5cm(ヘッドレスト付き)

 

チャールズ・イームズのチェアを使ったおしゃれコーディネート6選

プライウッドチェアを取り入れた、WICを格上げするモノトーンコーデ

WIC(ウォークインクローゼット)を使っていると、意外と椅子があると便利なのですが、イームズのプライウッドチェアのようなコンパクトで持ち運びしやすい軽さのチェアはまさに最適と言えます。

オフィスワーカーなどモノトーンな服の多い方などは、WIC全体もモノトーンでコーディネートすることで、空間がまとまって見える効果も期待できます。直線的な構造のクローゼットなどの収納家具に、流れるような曲線を持ったプライウッドチェアはアイコニック的に良く映えます。

決して人に見せるわけではないWICも、おしゃれにコーディネートすることでインテリアに対する意識の高さも感じます。

オブジェのようなラ・シェーズチェアでボリュームのあるモダンクラシックコーデ

彫刻をモデルにしたラ・シェーズチェアは、その優雅な曲線美でクラシカルなインテリアにもばっちりマッチします。

モダンクラシックスタイルは古典的な要素と近代的な要素を組み合わせるインテリアスタイルですが、ラ・シェーズのように近代的な素材を使いつつも、有機的で滑らかな曲線を持ったグラマラスでエレガントなフォルムのラウンジチェアは、装飾的なクラシックテイストのアイテムと合わせても、存在負けすることもなく、かといって反発しあうこともなく良く馴染みます。

インパクトのあるラ・シェーズチェアを、アイコンとしてではなく、インテリアに馴染ませる形で利用したコーディネートです。

シェルチェアの豊富なカラーバリエーションを活用した明るいダイニングルーム

豊富なカラーバリエーションを持ち、シンプルでスッキリとしたデザインの「プラスチックシェルサイドチェア」は、ダイニングルームに最適のアイテムです。家族のそれぞれ好きな色を選択したり、ビタミンカラーでヘルシーな印象に演出するなど多彩な表現が可能です。

脚部パーツは、ナチュラルやカントリー調ならば木製のダウェルベースがマッチ。モダンでクールな印象にしたい場合は、ワイヤーベースなどがおすすめです。

ウッド×メタルで洗練されたプロ風キッチン&ダイニングスタイル

ウッドとシルバーの金属素材でまとめられたダイニングキッチンスタイル。ウッドの温もりと高級感のある質感と、金属素材の冷たく無機質な光沢とのコントラストが絶妙なコーディネートです。

シンプルで無駄なものがなく、ストイックな印象はどこかプロの料理人のキッチンのよう。ワイヤーによる軽快でシャープな印象の「ワイヤーメッシュチェア」は、キッチンのストイックな印象をそのままダイニングにも再現しています。

ワイヤーメッシュチェアのように視界を妨げないチェアを使ったコーデは、広い部屋はもちろん、スペースに限りのあるお部屋にも真似できるスタイルです。

プライベート&コミュニケーションシーンの両方に使えるラウンジチェアの配置

書斎兼応接室としても使用できるお部屋に、「イームズラウンジチェア&オットマン」を取り入れたコーディネート。

オットマンとラウンジチェアを別々に配置することでコミュニケーションスタイルとなり、本を読むときにはオットマンとラウンジチェアを使用して個人で楽しむプライベートスタイルにもできます。

「イサムノグチのコーヒーテーブル」や「イームズスツール」と同様の、ウォールナット製のフレームを使用した、ブラックのレザーの張地の高級感のあるタイプを使用することで、書斎に統一感が生まれ、重厚感のある落ち着いた雰囲気となっています。

アルミナムグループチェアで省スペースを活用したスッキリとした書斎

「アルミナムグループチェア」のスッキリとしたシャープなフォルムは、スペースの限られた空間でも圧迫感なく使用でき、スタイリッシュで軽快な印象になります。本や資料が多くなりがちな書斎などで、なるべく空間をスッキリさせたい場合などにもおすすめのチェアです。

張り地バリエーションが豊富で、ファブリックタイプのカラーバリエーションが豊かですが、ブルーやイエローなどカラフルな色を選択しても、デザイン自体がシンプルでシャープなため、浮ついた雰囲気になることはなく、スッキリとした印象が保たれます。

写真のようにブルーのシートで、書斎にアクセントカラーを添えたコーディネートも楽しめます。

 

まとめ

戦争と経済の急成長という激動の時代の中、素材に対するチャレンジ精神と研究・実験を行う忍耐強さで、新しい時代のプロダクトデザインの道を切り開いたイームズ夫妻。20世紀の偉大なデザイナーの内に数えられる二人ですが、二人がとても楽しんで家具をデザインしている様子が写真に残されています。

そんなチャールズ・イームズとレイ・イームズの夫婦の好奇心とエネルギーは、イームズのチェアに今も宿っているように感じられます。シンプルなのにどこか人を惹きつける存在感や、見ているだけでどこかワクワクするような気持ちになるイームズのチェア。シンプルで取り入れやすいのもまた魅力的です。

皆さんもぜひインテリアに取り入れて、楽しいインテリアスタイルを、イームズ夫妻のように好奇心いっぱいに挑戦してみてはいかがでしょう。